2012 Fiscal Year Annual Research Report
二酸化炭素の資源化を指向する触媒的固定化反応の開発
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23350047
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
山田 徹 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (40296752)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 合成化学 / 触媒・化学プロセス / 二酸化炭素 / 廃棄物再資源化 |
Research Abstract |
初年度の本研究において、銀触媒により活性化されたアルキンは分子内でカーボナートアニオンの求核付加を受け対応する環状炭酸エステルを与えることを報告した。昨年度の検討では第3級プロパルギルアルコールに対する反応を検討し、エナンチオ選択性の制御にも成功した。今年度は第2級プロパルギルアルコールに対する二酸化炭素の付加反応を検討した結果、塩基としてDBUを用いることにより第2級プロパルギルアルコールと二酸化炭素の反応が穏和な条件下で進行し、第3級プロパルギルアルコールとは異なり、内部オレフィンを有する環状炭酸エステル誘導体が得られることを見出した。また本触媒反応系をo-アルキニルアニリン誘導体に適用したところ、銀触媒で活性化されたアルキンに対し、カルバミン酸アニオンが環化付加した結果と考えられる、対応するベンゾキサジン-2-オン誘導体が高収率で得られた。従来これらの化合物はホスゲンや一酸化炭素などの毒性の高い反応剤を用いる合成が一般的であり、銀触媒による二酸化炭素捕捉を鍵工程とする本法の優位性が期待される。一方、エノラートアニオンと二酸化炭素が反応して生じるカルボキシラートアニオンを銀塩により活性化されたアルキンで捕捉することに成功した。すなわち、二酸化炭素の炭素原子に対し新たな炭素-炭素結合の生成を伴う捕捉反応の結果γ位にアルキンをもつ種々のケトンに対して良好ないし高い収率で対応するラrrクトン誘導体が得られた。また脂肪族ケトンを用いた場合に生じる副生成物を解析したところ、フラン骨格を有するカルボン酸であることがわかった。還元的な二酸化炭素捕捉反応の開発では、触媒量のビス(1,3-ジケトナト)コバルト(II)錯体と還元剤としてジエチル亜鉛を用いることにより、α,β-不飽和ニトリルが還元的に二酸化炭素によってα位選択的にカルボキシル化され、対応するシアノ酢酸誘導体が得られる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画第2年度に,炭素-炭素結合形成を伴う二酸化炭素の捕捉反応の開発が実現できたが,研究計画に盛り込まれた項目であった。国外の有力雑誌に報告したところ,Hot Paperに選ばれた他,同誌の日本代理店サイトでも紹介された。また新聞記事としても紹介されるなど一定の反響があった。また,第3年度に向けて,還元工程を含む二酸化炭素分子の捕捉,官能基化反応の検討を計画しているが,本年度の検討で適用可能な還元剤に関して重要な発見があり,この項目に関しても次年度で一定の成果が得られる見込みがついた。また,二酸化炭素を原料とする本反応系において,従来合成が困難であった複素環化合物の合成法の開発に成功し,特許出願の予定であるほか,生物活性試験を予備的に行うことにした。
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Strategy for Future Research Activity |
銀触媒によるアルキンの活性化を鍵工程とする二酸化炭素の捕捉を基盤技術として研究を推進する。二酸化炭素の炭素原子に対する求核付加反応により,新たな炭素-炭素結合の形成を伴う新規反応の開発,および生成物の選択性合成,物性開発なども視野に入れた研究展開を行う。またアルキニルアニリン類に対する二酸化炭素の捕捉による複素環化合物の合成反応開発研究では従来法では毒性試薬の使用が必要であったのに対し,二酸化炭素を原料とする効率的な反応が実現されており,反応機構の詳細な検討とともに,生物活性試験の予備的な検討など,物性開発にも展開する予定である。還元工程を経る反応では還元剤の検討による効率的な二酸化炭素の捕捉による官能基化反応の開発研究を推進する。当初の研究計画の推進に加え,物性開発なども検討項目として新たに加えたい。
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Research Products
(10 results)