2012 Fiscal Year Annual Research Report
スーパーミクロポーラスシリカの細孔径制御とその細孔を利用した新機能性材料の創成
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23350102
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
今井 宏明 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (70255595)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡辺 洋人 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, その他部局等, 研究員 (00500901)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 量子ドット / 多孔質体 / 光触媒 / サーモクロミズム / ナノ粒子 / サブナノ粒子 |
Research Abstract |
本年度は、昨年度合成したCuO量子ドットに対して、バンドギャップ(Eg)の温度依存性を調査した。室温~600℃までの範囲では温度上昇に伴うEgの低下が観測され、電子-フォノンカップリングの尺度であるHuang-Rhysファクターが粒子サイズ低下に伴い増大する傾向を確認した。一方、低温領域、特に-100℃付近での顕著な変化は見られなかったことから、CuOのサーモクロミズムは熱膨張の寄与よりも電子-フォノンカップリングの寄与が支配的であるとの見解を得た。 本年度はさらに、量子ドット合成のターゲットとして新たに酸化コバルトを選択した。バルクでは、Co3O4選択的に生成するが、サブナノ細孔内では、2価のCoOが選択的に生成することが分かった。CoOはバルクでは900℃以上の高温下でのみ生成するが。我々の反応条件では450℃の低温領域からCoOが安定に生成した。CoO量子ドットは他の酸化物と同様にサブナノ領域で顕著な量子サイズ効果を示した。また、Cr, Co, Cuの酸化物ドットを還元し、金属クラスター化する試みも行った。新たに還元剤を用いた溶液反応を試みた結果、XPSによって0価のクラスターの生成が確認された。生成した0価クラスターは空気中で徐々に酸化し、ほぼ元のEgを有する酸化物ドットに戻ることから、溶液反応を用いた還元法は粒子の凝集・粗大化を伴わない還元法として有効である。 有機物の内包効果についてはモデル物質としてピレンを選択し、細孔径と蛍光量子効率の関係性を調査した。サブナノ細孔では、ほぼすべてのピレン分子がモノマーで存在し、希薄溶液に比肩しうる量子効率で発光した。有機物内包の第一の効果として、有機分子を集積しつつ孤立化させる媒体として本研究のシリカが有効であることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
多孔質シリカの細孔を利用した量子ドットの合成法について、酸化物・金属に関してほぼ確立した。また、バルクでは合成困難な化合物や熱的に不安定な化合物も細孔内では安定に存在できる事例もあり、サブナノ細孔の特異性を生かした材料開発に向けて大きく進展している。機能性評価として、現在は蛍光量子収率と有機物の熱分解反応への触媒活性評価系の構築をした。現在は、より顕著な機能発現が期待される光触媒反応について系構築を進めており、遷移金属酸化物量子ドットの高機能性の立証を試みようとしている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の最大の課題は、適切な光触媒系の構築である。現在、フロー系の有機物の光分解評価系を構築し、材料のスクリーニングに用いる予定である。また、量子ドットの機能性のより顕著な証明のために、二酸化炭素の還元系の構築を進めている。次年度においては、量子サイズ効果によって大きく上昇したと予測されるコンダクションバンドを有効に活用できる系として、この評価系を用いて材料の機能性評価に重点を置く。また、残りの第4周期遷移金属に関しても合成を行い、分光学的手法と、触媒活性評価の二面から解析を行う。また、有機物内包効果については、これまでのモデル系であるピレンを離れ、π電子平面の挙動や電荷移動相互作用に着目しながら、機能性の追求に重点を置いて進行させる予定である。
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