2012 Fiscal Year Annual Research Report
X線領域におけるフェムト秒光学遅延と自己相関器の研究開発
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23360038
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
玉作 賢治 独立行政法人理化学研究所, 石川X線干渉光学研究室, 専任研究員 (30300883)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | X線 / 非線形光学 / X線自由電子レーザー / 2光子吸収 |
Research Abstract |
本研究は、X線領域での原子の非線形光学過程を理論的・実験的に理解し、これを応用してX線自由電子レーザーのパルス幅を測定することを目標としている。平成24年度は、前年度に開発したガスチェンバと高効率の分光器を用いて、2光子による内殻2重イオン化の観測に成功した。15 keVのX線光子を2個続けて吸収させ、クリプトンの1s電子を1つずつ励起し、そこからの蛍光X線を測定することで内殻2重イオン化状態を確認した。クリプトンの場合、1sのホールの寿命は僅か170アト秒と短く、2つ目を励起するのは極めて困難である。このため、本研究の内殻2重イオン化の観測は、硬X線領域では世界で初めての成功例となった。 さらに、1s軌道に1つホールがある状態からの通常の蛍光X線強度と内殻2重イオン化状態からの蛍光X線強度を比較することで、本研究の最終目標であるパルス幅の見積りが可能であることを示した。このために、パルスの影響や強度揺らぎの効果を取り入れた解析手法を考案した。これを使って実験データを定量的に解析し、SACLAのパルス幅を2.5~2.8フェムト秒と決定した。こうして求めたパルス幅は、独立に行われた加速器側の電子ビームに対する測定結果とよく一致し、本研究の解析方法の妥当性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
既に自己相関器の核心部分となる2光子過程の観測に成功している。一方で、フェムト秒光学遅延に関しては後回しにした。これは、原子・分子系におけるX線の多光子過程が、海外グループとの熾烈な競争にさらされているためである。既に平成24年度の研究で光学遅延無しでもパルス幅を見積もれることを示しており、本研究の最終目標はほぼ達成されつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の研究により、内殻2重イオン化は散乱断面積が比較的大きく使いやすいことが分かった。しかし、クリプトンの場合、パルス幅が2フェムト秒より短くなると、パルス幅に対する感度が落ちてくることが計算から判明した。これは、170アト秒の寿命とはいえ中間状態を挟むためである。より短いパルス幅でも測定できるように、中間状態の存在しない2光子吸収過程をX線領域で利用する必要がある。そこで、最終年度は分光技術を高度化してX線2光子吸収の観測を目指す。
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Research Products
(3 results)