2012 Fiscal Year Annual Research Report
透過電子顕微鏡中共振圧縮疲労試験によるシリコンの疲労プロセスのその場観察
Project/Area Number |
23360054
|
Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
神谷 庄司 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00204628)
|
Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | シリコン / MEMS / 疲労試験 / 透過型電子顕微鏡 / EBIC / 圧縮応力 / 再結合欠陥 |
Research Abstract |
当初計画通りにMEMS共振デバイスを製作したが、SOI基板の支持層を静電駆動する先例のない構造を企画したことで動作特性が有限要素法解析や回路シミュレータと整合しないことが明らかとなった。機械設計のみでは解決が困難であり、当初計画にはなかった素子の電気的特性を精密に把握するため、LCRメータを新たに購入した。また共振デバイスの仕様を大幅に改善し、構造体の加工条件について試行錯誤を重ね、より安定した製作方法を策定した。テスト構造(TEG)を用いてアクチュエータの動作実験を行い、真空環境下で電圧を印加しアクチュエータが駆動することを確認した。あわせて平衡点シフト用の静電プローブをも製作した。さらにTEM外でも並行して同条件下の実験を行うべく、TEMホルダを搭載可能な外部試験装置を製作した。 一方、単結晶シリコンの疲労試験を行い、繰返し圧縮荷重による欠陥集積過程の観察と残存引張強度を評価し,疲労破壊機構について検討した。試験サイクル数の増加に伴い,シリコン内部の欠陥に起因する欠陥領域の増大を半導体欠陥評価手法の電子線誘起電流(EBIC)により観察した。また欠陥の確認された試験片の静的破壊強度は初期破壊強度より低下する傾向が見られたことから、圧縮疲労試験によってシリコン結晶中に再結合中心となる欠陥が発生し、本欠陥がシリコンの機械的強度と深く関連することを見出した。 さらにEBICで検出された疲労損傷集積部のTEM観察を実施した。TEMによる観察では転位等の長距離にわたる秩序だった欠陥は確認されず、繰返し圧縮荷重により集積された再結合欠陥は100nm以下のアトムスケールの欠陥であることが示唆された。これより、シリコンの疲労機構は圧縮による欠陥集積と引張による欠陥の急速な組織化で疲労破壊に至ると推察され、応力比を考慮したシリコンの疲労挙動の観察が今後の重要な課題となることが明確化された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画通りにMEMS共振デバイスを製作したが、支持層を静電駆動する先例のない構造を企画したことで動作特性が有限要素法解析や回路シミュレータと整合しないことが、最近になって明らかとなった。デバイス特性の最適化は疲労試験実施上極めて重要な要素となるが、これを当初計画になかった実験計測で実現する方法を策定するために予想外の時間を要している。
|
Strategy for Future Research Activity |
LCRメータを用いて製作した共振デバイスの電気特性を精密に把握し、デバイスの動作特性の改善をはかる。任意応力比における実験を可能とし、高湿度環境下で圧縮疲労試験を実施することで、試験片の破壊を避けつつ疲労損傷の集積を企図する。以上の過程を連続観察することで、シリコンの疲労機構を明らかにする。
|