Research Abstract |
高輝度放射光は平行度が高いために,それを用いたCT法において異材界面を強調して表示することができる.これは屈折コントラスト法と呼ばれている.一方,多結晶体においては,投影面上にBraggの回折条件を満たした結晶粒の影が現れ,それより回折角だけ離れた位置にその結晶粒の形が明るく投影される.試料を回転させると,各結晶粒に対して回折条件を満たす角度が多数存在するので,これらの像を抽出して3次元像を再構成すると,結晶粒の形状を3次元的に同定することができ,回折コントラスト法とよばれている.さらに,回折角より,結晶方位,原子間隔を求めることが可能となる.一方,回折角の拡がりから各結晶粒の過剰転位密度,ミスオリエンテーションを測定することが可能となる.屈折コントラスト法と回折コントラスト法を利用して,新たな材料損傷評価法を開発することが本研究の目的である.屈折コントラスト法については,既に十分な技術の蓄積があるので,本年度は,屈折コントラスト法を利用して転動疲労き裂発生メカニズムを明らかにするとともに,回折コントラスト法の解析技術を開発した.また,フレームに放射光吸収率の小さいアクリル樹脂性の中空円筒を用い,かつ,試料台に載せて回転させることのできる小型・軽量の引張り試験機を開発し,無負荷状態および引張り荷重を負荷した状態で放射光を照射してCTイメージングを行った.その結果を解析し,結晶粒形状の三次元同定と塑性変形に伴う回折スポットの拡がりを観察した.さらに,動電型加振機を利用して,Spring-8において高速で疲労試験を行うことのできる疲労試験機を開発した.また,固体表面の三次元形状を高倍率で観察することのできる走査型電子顕微鏡(SEM)を導入し,CTイメージングの妥当性を確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
屈折コントラスト法による微小き裂観察に関しては,当初の予定よりもはるかに進展した.また,回折コントラスト法に関しては,ほぼ予定どおりに進展している.一方,有限要素法による解析は,予定よりも遅れている.本年度は,東日本大震災の影響で,10月まで交付決定額の70%しか交付されず,残り30%の交付についても10月まで確約されていなかったため,計画的な補助金の執行,ひいては研究遂行に支障をきたした.
|
Strategy for Future Research Activity |
現在の回折コントラスト法の解析には多大の時間を要しているため,さらなる自動化を目指すとともに,汎用ソフトウェアの開発に努める.また,応力測定法の開発を進めていく. 回折スポットの拡がりを利用した材料損傷評価に関しては,本年度は引張試験についてのみ行ったが,来年度は疲労損傷評価にも応用する.さらに,クリープ損傷評価への適用の可能性について検討したい.
|