2012 Fiscal Year Annual Research Report
高感度反射FT-IR機構付き中性子反射率計の開発と摩擦調整剤吸着メカニズムの解明
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23360078
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
松岡 敬 同志社大学, 理工学部, 教授 (80173813)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平山 朋子 同志社大学, 理工学部, 准教授 (00340505)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | トライボロジー / 潤滑 / 固液界面 / 分析 / 添加剤 |
Research Abstract |
機械の更なる低摩擦摺動を実現するためには、境界潤滑摩擦の現象理解が必須である。古くより、潤滑油に含まれている摩擦調整剤が摩擦面に吸着して被膜を形成し、摩擦を低減するとされているが、その具体的な機構は未だ明らかでない。そこで本研究では、摩擦調整剤による境界潤滑被膜の形成メカニズムの解明とトライボ特性との関連性の把握を目標とする。具体的には、金属/潤滑油固液界面の化学吸着情報の取得が可能な高感度反射FT-IRを中性子反射率計に組み込むことにより、吸着層の物理物性(厚み・密度)および化学物性(面内の構造情報)を同時に取得できるトライボ分析装置の開発を目指すこととした。また、それを用いて、金属表面への摩擦調整剤の吸着状態、メカニズムを明らかにし、より良い境界潤滑被膜形成のための添加剤設計指針を提示することを最終目標とした。 今年度は、前年度に京都大学原子炉実験所に立ち上げたトライボロジーユース用中性子反射率計を用いて各種添加剤吸着層の厚みを計測した。その結果、高級脂肪酸による吸着層の厚みはその鎖長とほぼ同程度であることが分かった。また、J-PARCに設置されているTOF型中性子反射率計SOFIAを用いて吸着層の形成過程を時分解測定で観察したところ、添加剤を混入してから数分のうちに表面近傍に濃縮な添加剤層が形成されることが分かった。一方、ATR型FT-IRで表面近傍の添加剤吸着層の形成過程を調べたところ、安定した吸着層が形成されるまでに数時間を要することが分かった。これらの結果より、はじめに添加剤が表面に濃縮な物理吸着層を形成し、その後、数時間をかけて化学吸着層を形成していくことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
トライボロジーユース用中性子反射率計の開発および高感度反射FT-IRによる基本情報の取得を完了していることから、おおむね順調に進展していると判断する。しかしながら、東日本大震災の影響により日本原子力研究開発機構(東海村)の中性子反射率計が未だ稼動しておらず、今後の実験計画遂行にはやや懸念が残る。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度、京都大学原子炉実験所内にトライボロジーユース用の中性子反射率計を立ち上げたが、1測定に要する時間が予想していたものより長く、測定できるサンプル数に限りがあることが分かった。最終的に日本原子力研究開発機構設置の中性子反射率計MINEに開発オプションを移行する予定であるが、東日本大震災の影響により、現時点においても未だMINEの稼動予定が定まっておらず、次期の研究実施計画を早急に見直す必要がある。海外の反射率計の使用も視野に入れ、適宜マシンタイム申請を行っていく予定である。
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Research Products
(6 results)