2011 Fiscal Year Annual Research Report
純鉄スピンナノクラスター三次元自己組織化バルク材料の創製と超軟磁気特性の発現
Project/Area Number |
23360132
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小川 智之 東北大学, 大学院・工学研究科, 助教 (50372305)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 徹哉 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (20162448)
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Keywords | 純鉄 / スピンナノクラスター / 自己組織化 / 軟磁気特性 |
Research Abstract |
高飽和磁化を有する純鉄スピンナノクラスターの集合体では優れた軟磁気特性の発現が期待されている.化学的手法により作製した純鉄スピンナノクラスターは鉄重量当たりでは高い飽和磁化を有しているものの,粒子表面に吸着した界面活性剤が高透磁率化(低保磁力化)ならびに高飽和磁化化を阻害している.本研究では純鉄スピンナノクラスター三次元自己組織化バルク材料に真空中熱処理を施すことにより,界面活性剤の脱離を試みるとともに,それに伴う磁気特性の変化を調査した.純鉄スピンナノクラスター三次元自己組織化バルク材料を200℃で真空中熱処理を行ったところ,スピンナノクラスター間のギャップは1.6nmから0.8nmに短縮され,粒子充填率は38%から52%まで大きく向上した.これに伴い保磁力は10Oeから1.7Oeにまで減少し,飽和磁化は153emu/gから179emu/gにまで上昇した.これらの結果から,粒子表面の界面活性剤の大半が熱処理により除去され,軟磁気特性が向上したことが明らかとなった.一方,250℃以上で熱処理を行った試料では,粒径の粗大が観測され,純鉄スピンナノクラスターが残存した界面活性剤を取り込むことで炭化し,その結果,軟磁気特性が大きく損なわれた.界面活性剤の脱離温度はスピンナノクラスターの粒成長温度よりも高温であると考えられ,真空中熱処理では、粒成長を抑制した界面活性剤の完全な除去は困難であることが明らかとなった.更なる磁気特性の向上のためには,スピンナノクラスター同士の直接交換相互作用の促進と粒子充填率の改善を行う必要がある.すなわち炭化ならびに粒径の粗大化を抑えつつ界面活性剤を完全に除去する条件を見出すことが重要である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の中核材料となる純鉄スピンナノクラスター三次元自己組織化バルク材料を実現し、界面活性剤の除去が鍵を握ることなど、将来的に超軟磁気特性を得るための材料的な技術課題およびそれらを解決する指針を得ている。今後、技術課題を着実に解決することで更なる高特性のスピンナノクラスター材料が期待できる。以上の理由から、現状で研究はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
金属ナノ接合型の純鉄スピンナノクラスター三次元自己組織化バルクでは、スピンナノクラスター表面を覆う界面活性剤を完全除去することが鍵を握る。三次元自己組織化バルク材料を作製した後、界面活性剤の分解を促す反応性ガスやプラズマ照射により効率的に除去する技術、あるいは、三次元自己組織化バルク材料を作製する前段階の純鉄スピンナノクラスター合成段階において、界面活性剤の物理・化学吸着力に着目し、スピンナノクラスター表面に極力吸着しない界面活性剤の探索を行う。また、表面ナノ修飾型の純鉄スピンナノクラスター三次元自己組織化バルクでは、スピンナノクラスター間の磁気双極子相互作用磁界の制御が鍵を握る。粒径を系統的に変化させた時の磁気特性と磁気双極子相互作用との相関を探る。
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