2014 Fiscal Year Annual Research Report
多端子情報理論に基づく多入力多出力通信網の効率,信頼性および安全性解析
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23360172
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
大濱 靖匡 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (20243892)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 補助情報を伴うシステム / 相関と記憶のある情報源 / マルコフ補助情報を持つレート歪み理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
2つの情報源を考える。このうち一つは無記憶情報源、もう一つは、この無記憶情報源から、雑音のある通信路により誘導されるマルコフ情報源である。本研究では、このような相関と記憶を持つ2つの情報源に対する分散符号化問題を扱った。1つは、補助情報を伴う符号化システムである。このシステムでは、2つの情報源からの出力列はそれぞれ個別に符号化して復号器へ送られる。復号器は、マルコフ情報源からの出力列を任意に小さい誤り確率で復号しようとする。2つの情報源が無記憶の場合に関しては、圧縮限界を表す領域(許容伝送率領域)が、1975年にアルスウェーデとケルナーおよび彼らと同時期に独立にワイナーによって得られた。上記の記憶のある場合は、今日まで全く研究がなされていなかった。本研究では、許容伝送率領域の内界と外界を計算し、情報源がある対称性を持つ場合に両者が一致することを示した。もうひとつの問題として、マルコフ情報源が復号器において誤りなしで得られる場合に、無記憶情報源からの出力列をある与えられた値以下の平均ひずみで復号する問題を考えた。情報源がいずれも無記憶である場合については、圧縮限界を表すレート歪み関数が、ワイナーとジィフにより1976年に与えられたが、上記の記憶がある場合は、やはり今日まで研究がされていなかった。本研究ではこの問題を扱い、レート歪み関数の上界と下界を与えた。これは、情報源がある対称性を持つ場合に一致すると予想しているがその証明は今後の課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年、記憶のある情報源符号化システムを扱ったが、これは、多入力多出力通信システムの特別な相関をもつ場合と考えることができる。このような観点は、多入力多出力通信システムに対する新しいアプローチの方向を示唆するものである。多入力多出力を解析する新しい方向性を見出すことができたことから、本研究課題の到達目標は、おおむね達成できていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は研究の最終年度である。今後の研究の方向としては、これまでに得られた解析方法を整理して、今後の研究の発展の方向を明らかにする。具体的には、1、2年目の研究で得られた十分統計量に基づく方法を用いて、共通観測データがある場合の分散符号化の問題を解析する方法論を確立する。3年目の研究で、強逆定理を証明する新しい方法論を見出した。この方法論を多入力多出力通信システムへ適用する方向の可能性を検討する。 特に、新しい方法論をガウス型通信システムに対し適用した時に、強逆定理の証明はどうなるか、ガウス型の通信システムの場合によくつかわれるエントロピーパワー不等式を使わずに強逆定理が証明できるかどうかを考察する。また、記憶のある場合の解析方法を利用して、ある特定の構造を持つベクトル型通信システムを考察する。
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