2012 Fiscal Year Annual Research Report
地球温暖化時代を見据えた内湾環境の再構築に関する研究
Project/Area Number |
23360211
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
青木 伸一 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60159283)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 隆信 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00184755)
北田 敏廣 岐阜工業高等専門学校, その他部局等, 校長 (40093231)
加藤 茂 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40303911)
横田 久里子 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60383486)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 地球温暖化 / 気象変動予測 / 海象変動予測 / 流入負荷 / 水温 / 貧酸素水塊 |
Research Abstract |
気象変動に関する研究については,温暖化が進行した状態で沿岸付近で吹く海陸風がどう変化するかを,大規模場の背景気温を「現状ケース」および「2℃ないし4℃上昇させたケース」について,気象モデルによるシミュレーションを行い調べた.その結果,海陸風時の流れ場にそれほど変化がないものの,地表面近くの大気の安定成層化が特に夜間から早朝で進み,大気化学物質の滞留が起こりやすいことが推測された. 海象変動に関する研究については,気象庁・数値予報GPVより作成された1時間間隔の海上風データを用いて,SWANにより日本周辺域および伊勢湾・三河湾を含む遠州灘沿岸域において,2009年(1年間)の波浪場の推算を行った.外洋での波浪観測結果と比較し,長周期波浪成分はやや過小評価されるものの,台風等による波高の増大等は比較的良好に計算されることを確認した.また,内湾での波浪推算精度について検討した. 陸域流出へのインパクトに関する研究については,三河湾流入河川の豊川流域と梅田川流域を対象とした栄養塩流出負荷モデルについて,そのパラメータの設定方法について検討した.地球温暖化に対応した降雨量や気温の上昇に伴う蒸発散量の変化など複数のシナリオに基づくシミュレーションが簡単にできるように改良を加えた.また,三河湾流入河川である梅田川流域の畑地からの栄養塩流出負荷について,特に降雨時を対象として流出負荷を実測し,流出負荷の時間適変化をより詳細に再現可能なモデルの構造について検討を行った. 海域環境へのインパクトに関する研究については,前年度に引き続き三河湾における水温データを用いて長期的な水温変化のトレンドを調べるとともに,季節変動や日較差についても検討を加えた.さらに,夏期の三河湾における貧酸素水塊の調査から,密度成層の強化と風の変化が苦潮(青潮)の浅海遡上に影響することを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
気象変動に関する研究については,メソスケールの気象モデルを完成させ,その適用・検証を行っており,温暖化によるローカルな大気環境の予測が可能なレベルにまで達している.また,海象変動に関する研究についても,SWANを用いた波浪場のシミュレーションが可能になっており,現地データとの比較によりモデルの検証を行っている.このように,地球温暖化による気象海象の変化についてはツールの構築とその適用性の検証まで進んでおり,概ね順調に進展している. 陸域流出へのインパクトに関する研究については,栄養塩流出負荷モデルの構築とその現地データによる検証を行い,さらに地球温暖化が陸域流出に及ぼす影響を評価するためにモデルの改良を行ったところである.海域環境へのインパクトに関する研究については,既存データと現地観測により温暖化の影響が実際に現れていることを実証した.今後は,簡易な数理モデルを用いて内湾の温熱環境変化の将来予測を行い,将来の内湾の姿を予測する予定であり,温暖化インパクトに関する研究についても,概ね順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
気象変動に関する研究については,2012年度の解析をさらにすすめ,温暖化進行後の沿岸部の局地風特性をさらに明らかにするとともに,大気汚染物質の化学輸送シミュレーションを行い,温暖化が濃度場をどう変えるかを明らかにする. 海象変動に関する研究については,2012年度に行った三河湾内での波浪推算結果をもとに,湾内での波浪分布(波高,周期)特性を検討する.また,過去約30年間の潮位データを再解析し,三河湾周辺の気候変化と潮位特性の変化について検討を行う. 陸域流出へのインパクトに関する研究については,栄養塩流出負荷モデルを用いて,地球温暖化による気象条件などの変化について,いくつかのシナリオを想定してその場合の栄養塩流出負荷の変化について検討する.また,三河湾湾奥部への面源からの栄養塩流出負荷のうち主要な排出源である畑地を対象として,流出負荷を実測調査するとともに,地球温暖化が生じた場合の流出負荷の構造変化について検討する. 海域環境へのインパクトに関する研究については,さらなる温暖化の進行が貧酸素水塊の形成にどのような影響を及ぼすかについて検討するとともに,内湾の水質や生態系の維持に重要な干潟域の温熱環境への影響について,現地観測と数理モデルを用いて検討する.
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Research Products
(9 results)