2012 Fiscal Year Annual Research Report
安全安心な都市を創る効率的かつ柔軟性の高い都市物流システムに関する研究
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23360222
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
谷口 栄一 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70252468)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 忠史 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80268317)
中村 有克 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80589185)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 物流 / 多目的最適化 / 災害時 / マルチエージェントモデル |
Research Abstract |
1)災害時における多目的最適化配車配送計画モデルの実際の道路ネットワークへの適用および比較検討 前年までに開発した配車配送計画モデルは、単目的のモデルであるが、これを多目的の最適化モデルに発展させた。災害時においては、顧客の需要に対して、供給できる物資が少ない場合が想定される。そのような場合には、トラックの総走行時間(あるいは総燃料消費量)を最小化するのみならず、病院などの優先的に物資を配送すべき顧客への配送を行うこと目的として取り入れる必要がある。このような多目的配車配送計画問題は、パレート解として複数の解が求められる。ここでは、解法として、非優越ソート遺伝的アルゴリズム(Non-dominated sorting genetic algorithms)(Goldberg(1989))を用いてパレート最適解の近似解を求めた。ここで開発したモデルを東日本大震災の石巻市の実際の道路ネットワークに適用し、災害時において、トラックの総燃料消費量および優先度の高い顧客への供給不足ペナルティの2つの目的を考慮する場合の多目的配送戦略について検討した。 2)マルチエージェントシミュレーションによる災害時における物流拠点配置配送計画の評価 災害時においては、道路ネットワークにおいて、通行不能区間や交通容量の減少区間が発生し、所要時間が大きく変動する。このような状況において、被災者に物資を適切に配送するために、関係する利害関係者(荷主、物流事業者、行政、住民など)の相互関係をモデル化したマルチエージェントモデルを構築した。このモデルは、前年までに開発した物流拠点配置配送計画モデルを基礎として、これまでに開発したマルチエージェントモデル(Tamagawa et al. (2010))を、突発事象に対応できるように改良して適用したモデルである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、都市物流システムについて、平常時においては効率的かつ環境にやさしいシステムとし、地震などによる災害時においても効率的かつ柔軟に対応できるシステムとするための方法論を明らかにすることである。その目的を達成するために、平成24年度は、1)災害時における多目的最適化配車配送計画モデルの実際の道路ネットワークへの適用および比較検討および2)マルチエージェントシミュレーションによる災害時における物流拠点配置配送計画の評価について研究を行った。災害時における多目的最適化配車配送計画モデルとして、トラックの総燃料消費量のみならず、病院などの優先度の高い顧客への供給不足ペナルティを目的関数として採用した。このモデルを東日本大震災で大きな被害を受けた石巻市の道路ネットワークおよび避難所への物資配送問題に適用し、モデルの適用性を確認した。 また、災害時のマルチエージェントモデルにおいては、物資配送に関連する利害関係者(荷主、物流事業者、住民、行政)の行動を考慮したモデルを構築した。 以上のことから、研究目的を達成するために、順調にモデルの開発および実際の道路ネットワークへの適用、評価が進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、前年度までに開発したモデルをさらに発展させ、救急車の配置計画モデルの構築を行い、緊急車両の配置計画に関する研究を行う。従来の研究は、所要時間の変動を考慮していない場合が多く、所要時間として1つの値を用いている場合が多い。ここでは、所要時間の変動を考慮した救急車の動的配置計画モデルを構築する。この研究においては、平常時における緊急車両の動的配置計画について研究を行い、平常時ではあるが、突発的な事象が発生する場合の配置計画の最適化モデルを構築する。 さらに、平常時および災害時における都市物流施策の評価を実施する。今回開発するモデルにおいては、災害時における突発事象の発生による損害を中心に開発を進めるが、従来から交通渋滞および環境に与える影響については研究を行っており、それらをまとめて、総合的に都市物流施策の評価を行う。施策の評価を通じて、荷主、物流事業者にとって効率性の面で便益があるのみならず、社会的に渋滞緩和、環境改善、安全性の向上、突発事象に対する柔軟性の向上に便益がある都市物流システムを構築する方法論が明らかになる。
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