2011 Fiscal Year Annual Research Report
変形とリダンダンシーを考慮した鋼構造耐火設計の枠組構築
Project/Area Number |
23360240
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
|
Research Field |
Building structures/materials
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
鈴木 弘之 筑波大学, システム情報系, 教授 (20114093)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河野 守 東京理科大学, 工学部, 教授 (60170205)
鈴木 淳一 独立行政法人建築研究所, 防火研究グループ, 研究員 (10453846)
|
Keywords | リダンダンシー / 柱と梁の変形 / 間仕切壁の変形 / 耐火被覆材の変形 / 火災応答解析 |
Research Abstract |
研究目的として設定した複数の課題に対して、次の成果を得た。 1.耐震設計を施された鋼構造ラーメンを対象とし、精算解析である火災応答解析を専ら適用して、梁の撓み・部材角・伸び出しと、部材角を呈しつつこれを拘束する柱群の剛性・強度との間の関係を検討した。特に、梁の伸び出しを拘束する柱群の上限の力と梁の軸方向強度の比に着目すると、弱い梁の撓みは、火災の比較的初期から小さくないこと、一方、弱い柱群の側柱は部材角も軸方向縮みも大きくなることなどが、定量的に明らかになりつつある。 2.火災時における鋼架構の柱・梁・床の変形に対して、非耐力の壁は損傷を被らずにこれに追従できるかを検討するために、乾式間仕切り壁の載荷・加熱試験を行った。初年度に試みた載荷は、壁面内を鉛直方向に圧縮する強制変形であり、加熱された梁の撓みを想定している。行った実験の範囲内ではあるが、壁の軸方向変形追従性能、加熱に伴う面外変形量の大きさは、鋼製下地の軸耐力・剛性に大きく依存すること、その耐力・剛性の低い方が性能はむしろ良くなりそうなことが明らかになってきている。 3.鋼架構の火災時構造安定性における変形とリダンダンシーの競合を論ずべく、初年度は、鋼材の高温時力学的特性のばらつきに対する系統的な整理法を検討すると共に、既開発の火災応答解析法を改訂して、各種ばらつきを組み込むことのできるバージョンを開発した。まず、SN400鋼材等の高温時応力~歪関係を実測して、ばらつきを考慮した鋼材の高温時応力~歪モデルを開発した。次に、これを改訂した火災応答解析コードに組み込んで、小部材で構成された単純な構造および多層平面架構を対象としたモンテカルロシミュレーションを試み、架構の崩壊温度のばらつきに対する基礎的な検討を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時に設定した5課題に対して、本年度は4課題に取り組み、ほぼ予定通りの研究進捗状況である。火災応答解析による架構の変形予測に対しては、解析結果が略整理できている段階である。壁の載荷・加熱試験では、概して良好な変形追従性能は得られなかったが、これは予想通りの結果であって、むしろ成果であると考えている。諸元のばらつきが鋼架構の火災時崩壊温度に及ぼす影響に関する研究は、まだ着手段階にあるが、解法開発はほぼ完了の状況であり、シミュレーション解析により基礎的な成果も得られ始めている。
|
Strategy for Future Research Activity |
予定通り2年目の研究に着手する計画であり、研究遂行上、特に計画を変更しなければならない点はない。壁の変形追従性を把握する実験研究では、工法改良とその性能検証を試みてゆく予定であるが、全くの未開拓領域の研究であり、手探りのアプローチを強いられることにはなる。諸元のばらつきと崩壊温度の関係を把握する研究では、材料の硬化状況が架構の火災時リダンダンシーに深く関わることが分かってきており、基本鋼材料の高温時力学特性とそのばらつきを詳細に見直す必要があると考えている。鋼材の高温引張試験はこれを考察することの一環として行う。
|
Research Products
(5 results)