2013 Fiscal Year Annual Research Report
変形とリダンダンシーを考慮した鋼構造耐火設計の枠組構築
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23360240
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
鈴木 弘之 筑波大学, 名誉教授 (20114093)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 淳一 独立行政法人建築研究所, 防火研究グループ, 研究員 (10453846)
河野 守 東京理科大学, 工学部, 教授 (60170205)
尾崎 文宣 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (40434039)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | リダンダンシー / 柱と梁の変形 / 間仕切り壁の変形 / 火災応答解析 / 限界状態設計 |
Research Abstract |
研究目的として設定した課題に対して、次の成果を得ている。 1.火災加熱を受けて高温部材が塑性化しても、応力再配分作用が発現し始めて、鋼架構の崩壊温度はさらに上昇する。この火災時リダンダンシーを支配する因子として、架構のベースシアーの大きさ、応力再配分率、柱梁強度比、火災の範囲に着目し、一連の火災応答解析を行って、支配要因と架構崩壊温度の関係、および崩壊に至るまでの高温部材の変形の推移を求めた。併せて、床が梁の伸び出しを抑える効果が有意であること、および、溶接接合部の高温強度性能は母材部のそれを下回らないことを明らかにした。溶接部の耐火性能は従来ほとんど知られていないことを踏まえ、溶接接合部から削りだした素材の高温引張試験を行って、基礎資料を得た。 2.乾式壁に火災加熱と面内強制変形を同時に負荷する実験を行い、壁の火災時変形追随性能を調べた。熱応力と変形によって壁には亀裂や目地部の隙間が発生し、壁の変形追随性能を大きく向上させることは現状の改良法では難しいことが分かってきている。併せて壁の熱物性調査とこれに基づく熱伝達解析を試みて、壁の温度上昇推移予測を行っており、成果を得つつある。 3.鋼の力学性能のばらつきが架構の崩壊温度のそれに及ぼす影響を明らかにすべく、既存の高温素材試験結果をデータベースとして、鋼の高温強度の多変量正規乱数標本を作製し、モンテカルロ解析と理論の両面から単純な架構の崩壊温度のばらつきを予測した。鋼の強度の温度毎のばらつきばかりでなく、温度上昇に伴うその低下勾配と低下の推移が架構崩壊温度のばらつきに大きく影響することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時に設定した課題に対する研究進捗に伴い、新しい成果が得られており、研究の方向が定まりつつあるという状況である。 ・壁の変形追従性を把握する実験研究では、目地の隙間や圧縮される下地材の面外座屈変形が観察されており、本年度は下地材の面外座屈を抑える工法を試みたが、大きな性能改善は得られなかった。脆い断熱材料に軽微な下地材を添えるという現在行われている工法の乾式間仕切り壁に飛躍的な火災時の変形性能向上を求めるのは難しいというのがここまでの知見である。性能の現状が把握されたという成果は得られたと考えている。 ・一方、架構の火災時リダンダンシー分析と火災時変形の解析研究は順調に進められており、壁に許される変形は大きくはないことを踏まえて、加熱による梁の変形を抑える架構方法、寸法配分、床が梁の変形を抑える効果が明らかになりつつある。次年度は、別の角度からも、この問題に対する対策を考察する計画である。 ・諸元のばらつきと崩壊温度の関係を把握する研究では、鋼の高温強度のばらつきと架構崩壊温度のそれとの関係において研究の進展を見ている。鋼の強度の温度毎のばらつきばかりでなく、温度上昇に伴うその低下勾配と低下の推移が架構崩壊温度のばらつきに大きく影響することが判明しており、特に、高温域で後者のばらつきが大きくなる。この基礎的認識の獲得は重要であり、次年度の研究展開に影響する。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画と前年度までに得た成果を踏まえ、次年度の研究計画を概観する。 ・架構の火災終局時の部材変形は大きく、ここまでの変形には乾式壁は追随できないことが判明しており、これを踏まえて次の3研究を試みる。何れも解析研究である。① 架構の危険部材温度を壁の変形追随限界を踏まえて低減すべく、低減量を明らかにし、併せて、高温部材の変形抑制に寄与する構造特性と架構法を検討する。② 火災終了時の部材変形が壁の変形限界以下に止まるために必要な崩壊温度の割増高、あるいは耐火被覆の割増高を明らかにする。③ 延焼は避け得ないとして、火災が層全体に拡大したときの架構崩壊温度の低減量を明らかにする。 ・諸元のばらつきと崩壊温度の関係を把握する研究では、鋼の高温強度低下をより詳しく調べる。すなわち、やや過度な高温域まで(1000℃程度まで)の鋼の強度を、素材試験を新たに計画して調査し、これに基づいて鋼の高温構成関係の見直しを図る。当初の架構のリダンダンシーとばらつきの競合に対する研究は、従来の火災応答解析、本年度開発したばらつき評価法、および、より精確な鋼の構成関係に基づいて実施する。
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Research Products
(7 results)