2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23360253
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
羽山 広文 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80301935)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齊藤 雅也 札幌市立大学, デザイン学部, 准教授 (20342446)
菊田 弘輝 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20431322)
森 太郎 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70312387)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 室内温熱環境 / ヒートショック / 生理データ / 人口動態統計 / 気象データ |
Research Abstract |
平成23年度から実施している本研究では、①人口動態統計を用いた分析による住環境と死亡の関係の明確化、②居住者を対象にした住環境変化による身体へ与える影響の実態把握、③室温確保に必要な住戸の断熱性能・必要なエネルギー消費量把握までを一貫して行い、安全と健康に配慮した住環境計画の指標作成を目的に以下の事項を実施した。 1.人口動態統計による死因の分析と気象条件との関連性評価: 厚生労働省より新年度(平成22年1月~12月)の人口動態統計データを入手し、死因と気象条件の関連性を死亡場所別、地域別に分析し、過去(平成14年~平成21年)と比較した。その結果、外気温度と死亡率の関係において、病院ではいずれの地域も外気温度に対する死亡リスクの変動は見られないが、自宅では温暖な地域ほど外気温度が低下した場合の死亡リスクが増大することを明らかにした。また、アメダス気象データとの関連付けを行い、都道府県別外気温度影響度を定量化した。さらに、最寒日からの日数と死亡率の関係を分析評価した。 2.在宅医療・看護時の室内温熱環境が身体へ与える影響の実態把握: 今年度は福井県および兵庫県内で、在宅医療・看護を実施する際、室内温熱環境と生理データ(血圧、心拍数)を同時に計測し、室内温熱環境が身体へ与える影響を把握した。その結果、室内環境の温度差が大きな対象のデータも加わり、室温の低下と収縮期の血圧上昇の関係を定量化した。 3.入浴環境が身体へ与える影響の実態把握: 福井県を中心に、入浴前後の室内温熱環境と生理データ(血圧、心拍数)を同時に計測し、室内温熱環境が身体へ与える影響を把握した。 4.住宅内温度の分析と基礎室温の提案: 全国の住宅内温度分布の実測結果から室温分布発生の要因分析を行い、室温確保に必要な住戸の断熱性能・必要なエネルギー消費量を把握した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.人口動態統計による死因の分析と気象条件との関連性評価: 厚生労働省より新年度(平成22年1月~12月)の人口動態統計データを目的外使用の申請で入手し、死因と気象条件の関連性を死亡場所別、地域別に分析し、過去(平成14年~平成21年)と比較評価している。最新のデータは2年前であり、毎年申請を行い入手する必要がある。アメダスデータとのリンク方法も計算機上で自動化するソフトウエアを開発し、分析の効率向上を図っている。前年度から、最寒日からの日数と死亡率の関係に関し、統計的な手法を駆使し分析を進めている。この検討は当初の予定にはないが、興味深い成果が期待できる。 2.在宅医療・看護時の室内温熱環境が身体へ与える影響の実態把握: これまで、北海道(夕張市)、福井県(福井市)および兵庫県内(神戸市)で、在宅医療・看護を実施する際、室内温熱環境と生理データ(血圧、心拍数)を同時に計測し、室内温熱環境が身体へ与える影響を把握している。在宅医療を実施する医師の協力を得ながら進めているため、サンプル数には限界があるが、粘り強く継続している。 3.入浴環境が身体へ与える影響の実態把握: 北海道(札幌市)および福井県(福井市)を中心に、入浴前後の室内温熱環境と生理データ(血圧、心拍数)を同時に計測し、室内温熱環境が身体へ与える影響を把握している。この課題もサンプル数を増やすことに苦慮しているが、得られた結果から、室内環境と血圧等の生理データの相関が明らかになってきている。 4.住宅内温度の分析と基礎室温の提案: 全国の住宅内温度分布の実測結果から室温分布発生の要因分析を行い、室温確保に必要な住戸の断熱性能・必要なエネルギー消費量を把握している。分析に必要なデータの入手は概ね完了している。 以上の成果から、住環境における「住環境危険注意報」の立案と「建築計画・住環境計画の改善」提案としてまとめる。
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Strategy for Future Research Activity |
1.人口動態統計による死因の分析と気象条件との関連性評価: 厚生労働省より新年度(平成23年1月~12月)の人口動態統計データを入手し、死因と気象条件の関連性を死亡場所別、地域別に分析し、過去(平成14年~平成22年)との比較を試みる。これにより、住宅の熱性能向上にともない、自宅での死亡率の変化を明らかにする。特に、外気温度と死亡率の関係において、自宅では温暖な地域ほど外気温度が低下した場合の死亡リスクが増大することを明らかにする。 2.在宅医療・看護時の室内温熱環境が身体へ与える影響の実態把握: 在宅医療・看護を実施する際、室内温熱環境と生理データ(血圧、心拍数)を同時に計測し、室内温熱環境が身体へ与える影響を把握する。四季を通じて調査を継続することから、25年度も継続する。在宅医療を実施している医療機関へ働きかけ、夕張市、福井市以外の地域(兵庫県、秋田県など)の調査を実施する。 3.入浴環境が身体へ与える影響の実態把握: 入浴前後の室内温熱環境と生理データ(血圧、心拍数)を同時に計測し、室内温熱環境が身体へ与える影響を把握する。四季を通じて調査を継続することから、25年度も継続する。また、被験者を全国から募集し、地域差を分析する。 4.住宅内温度の分析と基礎室温の提案: 平成16-17年に国土交通省、東京電力、関西電力、中部電力、九州電力からの補助により設置された「(社)日本建築学会学術委員会住宅内のエネルギー消費に関する調査研究委員会」(委員長:村上周三 慶応義塾大教授=当時)のデータを活用し、全国の住宅内温度分布の実測結果から室温分布発生の要因分析を行い、室温確保に必要な住戸の断熱性能・必要なエネルギー消費量を把握する。 5.以上の結果を総括し、安全と健康に配慮した住環境計画の指標を取りまとめる。
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