2012 Fiscal Year Annual Research Report
不揮発性メモリ用Ge-Cu-Te系相変化材料の研究
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23360297
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
須藤 祐司 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80375196)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 半導体メモリ / 相変化メモリ / アモルファス / 結晶化 / 電気抵抗 / 電子状態 / 結晶化速度 |
Research Abstract |
Ge-Cu-Te化合物を用いたPCRAMに関する研究を行った結果、以下の知見を得た。 (i)相変化速度:レーザー照射装置を用い、GeCu2Te3(GCT)の結晶化、アモルファス化速度を評価した。結晶化速度については、高速結晶化で知られるGe2Sb2Te5化合物(GST)とほぼ同程度の速度を有する事が分かった。一方、アモルファス化速度についてはGSTに比べて速い事が分かった。(ii)多値記録:GCT/GST積層型多値記録PCRAMを提案した。本デバイスは、GCTとGSTの物性値の違いから、初期化を行うことなくデータを多値に書換える事が可能である。(iii) 硬X線光電子分光実験:GCTアモルファス相の電気抵抗は負の温度依存性を示し、そのバンドギャップは約0.4eVであった。一方、GCT結晶相のバンドギャップは約0.2eVと見積もられたが、結晶相の電気抵抗は金属的な正の温度依存性を示し結晶相が縮退した半導体である事を示唆した。硬X線光電子分光実験より得られた結晶相の価電子スペクトルからもフェルミ準位が価電子帯に入り込んでおり縮退している事が確認された。(iv)相変化に伴う密度変化および反射率変化:X線反射法および分光光度計により、GCTアモルファス相および結晶相の密度、反射率をそれぞれ測定した結果、GCTは従来の相変化材料と異なり、アモルファス相の方が結晶相より大きな密度かつ高反射率を有する事が分かった。(v)アモルファス相構造:EXAFSおよびXRDを用い、アモルファス相(成膜まま)の構造を決定した。その結果、GCTアモルファス相は、いずれの元素も四配位を呈する事が分かり、この安定なアモルファス構造が高い熱的安定性の要因である事が示唆された。(vi)Ge-Te-Siの提案:結合エンタルピーの大きさから、Ge-Cu-Te同様、Ge-Te-Siについても高結晶化温度を有する事を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
GCTは、既存実用材のGSTとほぼ同等の結晶化速度かつGSTよりも速いアモルファス化速度を呈し、低消費電力、高耐熱性かつ高速データ書換えを併せ持つ相変化メモリになり得る事が分かった。また、GCTの相変化挙動自体が既存材料と異なる事が分かってきた。例えば、相変化に伴う密度変化および反射率変化は、既存相変化材料と全く逆(変化の符号が逆)の挙動を示す事が分かった。GCT化合物の結晶相は、四配位のカルコパイライト型構造を呈するが、従来より、四配位を示す材料は、相変化による反射率変化を示さず、また速い結晶化を示さないと言われてきた。それ故、本GCTは、従来の常識を覆す材料である事が分かってきた。最近の成果によれば、アモルファス相も各元素が四配位の結合を有しており、このアモルファス/結晶の構造類似性が速い相変化を実現している事が示唆される。この希な相変化挙動を示すGCTの相変化メカニズムを解明することにより、新たな相変化材料の設計指針を得られる可能性を秘めている。 更に本研究では、GCTデバイスのメモリスイッチング挙動を実証した他、GCT/GST積層型の多値記録PCRAMの提案を行った。通常、結晶化温度が高ければ融点も高くなるが、GCTは、その相安定性から低融点にも拘らず、高い結晶化温度を有する。この特徴を生かし、GCT/GSTを積層した場合、データの初期化を行うことなくデータを多値に書き換えられる事を明らかにした。 また、Cuのみならず、Ge-TeへのSiの添加が、結晶化温度を高めるのに有効である事を見出した。これは、Si-Te結合のみならず、Si-Si結合が形成されることでアモルファスの熱的安定性が向上することに起因すると示唆された。 以上のように、GCTの相変化挙動のみならず、多値記録メモリデバイスの提案や新規相変化材料の創製についても成果が得られており、当初の計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により、GCTは、既存材料とは異なる相変化挙動を示す事が分かった。来年度は、GCTにおける相変化挙動、高速相変化メカニズムや反射率変化および密度変化について、アモルファス相/結晶相の電子状態や化学結合状態の変化、構造変化の観点からさらに考察する。具体的には、X線解析をもちいたアモルファス相、結晶相の構造(準安定相の存在の有無など)の同定や、計算による構造解析を行い、GCTの相変化メカニズムを解明する。特に、アモルファス相については、成膜ままのみならず再融解したアモルファス相についても調査を検討する。更に、Ge-Cu-Te系相変化材料について、相変化に伴う体積変化や反射率変化、電気抵抗変化などの組成依存性に関する基礎的知見について明らかにする。 メモリデバイスについては、GCTのサイズ効果を調査し、3Dメモリ等への微細相変化メモリへの適用を調査する。その際、最適電極、ヒーター材料も検討する。これまでの知見により、GCTは相変化に伴う体積(密度)変化が既存材料とは逆であるが、その変化の大きさは半分程度と小さく、繰返し特性に優れる事が期待される。それ故、GCTデバイスの繰返し特性についても調査する。 また、Ge-TeへのSiの添加が耐熱性向上に有効である事を見出してきたが、今後も元素間の結合エンタルピーや相変化挙動の観点から新規相変化材料の提案を試みる。
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Research Products
(15 results)