2013 Fiscal Year Annual Research Report
微生物を介した大腸炎寛解プロセスのシステム論的制御
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23360373
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
常田 聡 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (30281645)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大坂 利文 早稲田大学, 付置研究所, 助教 (70514470)
加川 友己 早稲田大学, 付置研究所, 講師 (90409649)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 腸内細菌 / 代謝産物 / 大腸炎 / メタボローム / 数理モデル / 抗炎症 / プロバイオティクス |
Research Abstract |
本研究課題は、実験およびシミュレーションを併用するシステム論的アプローチを用いた効果的なプロバイオティクス治療戦略を実現することである。本研究では、複数の細菌との相互作用(エンドトキシン不応答期への誘導、抗炎症応答、腸上皮バリアの再構成など)が腸炎寛解プロセスに重要な役割を果たしていると考え、腸内細菌と腸上皮細胞の相互作用に着目した。本年度は、抗炎症能が見出された4菌種(Ruminococcus sp., Enterococcus cecorum, Bifidobacterium pseudocatenulatum, Bacteroides thetaiotaomicron)の培養上清を曝露したHT-29細胞のトランスクリプトームをGeneChipにより解析したところ、Ruminococcus sp.の培養上清を曝露したHT-29細胞は、他の3菌種の培養上清を曝露した場合とは大きく異なる遺伝子発現プロファイルを示した。特に、Ruminococcus sp.はMAPK経路を活性化していることが示唆された。また、Bifidobacterium属のいくつかの種において、炎症腸上皮のバリア機能の再生能が高いことを見出した。また、Bifidobacterium属と腸上皮細胞の共培養系の培養上清について、1H-NMRによるメタボローム解析を行ったところ、Bifidobacterium属は腸上皮細胞との相互作用により、腸上皮バリア機能の強化に関わる酢酸合成が著しく亢進していることが明らかとなった。腸内細菌由来の代謝産物には、炎症応答制御以外にも、腸上皮細胞や免疫細胞に対する様々な生理活性機能が潜在していることが期待される。さらに、個体間の相互作用からシステム全体の特性を表現できるIndividual-based modeling (IBM)を使って、大腸陰窩における上皮細胞の増殖・分化機構の時空間的ダイナミクスを表現するシミュレーターを開発に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
腸内細菌による抗炎症応答および腸上皮バリア機能の再生のメカニズムについて明らかになりつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
モデルに設定した細胞の挙動に関するパラメーター(細胞周期、分裂パターン、分裂軸の角度、分裂回数、世代数)に加えて、細胞間の接着機構やアポトーシスなどに関与する細胞内シグナリング)のパラメーターを加えていくことで、腸上皮組織の創傷治癒機構を予測するモデルに構築していく。そして、各プロバイオティクス菌株の有する腸上皮バリア機能の再生力を定量的に比較・検証できるシステムを構築することを目指していく。
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Research Products
(5 results)