2012 Fiscal Year Annual Research Report
プロトクロロフィリド還元酵素とニトロゲナーゼ:安定な多重結合還元の共通反応基盤
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23370020
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
藤田 祐一 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (80222264)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 繁 名古屋大学, 遺伝子実験施設, 名誉教授 (40108634)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 酵素反応 / 電子伝達 / プロトン移動 / 電子スピン共鳴 / 鉄硫黄クラスター / クロロフィル生合成 / ニトロゲナーゼ |
Research Abstract |
暗所作動型プロトクロロフィリド(Pchlide)還元酵素(DPOR)は、クロロフィル生合成系酵素として初めて結晶構造が明らかにされ、立体構造に基づき反応機構を議論することが可能となった。Pchlideの C17とC18へのプロトン供与体として各々Pchlide自身のプロピオン酸とBchB-Asp274が想定された。そこで、これらプロトン供与体からのプロトン移動をブロックすることで、反応中間体検出を試みようとしている。昨年度は変異酵素BchB-D274Aによる中間体としてPchlideラジカル検出に成功した。本年度は、C18へのプロトン移動をブロックする基質アナログとしてクロロフィル c(Chl c)と変異型酵素D274Aを用いて反応を追跡した。その結果、Chl cとD274Aの反応においてg値2.005を示すChl cラジカルを検出した。また、電子伝達阻害剤ニコチンアミド存在下でPchlideとD274Aで反応を行うと、Pchlideラジカルに由来すると思われるg値2.004のシグナルが消失し、同時に吸収スペクトルの701 nmにおける変化(A701)が抑制された。この観測結果を基に、反応機構以下のように推察している。 Pchlide->Pchlideアニオンラジカル->Pchlideニュートラルラジカル->アニオン中間体->Chlide また、DPORと連続で機能するもう一つのニトロゲナーゼ類似酵素クロロフィリドa還元酵素(COR)の再構成系をDPORの再構成系と組み合わせることで、ニトロゲナーゼ類似酵素の連続反応を再構成することに成功した。この再構成系での色素動態を詳細に検討した結果、CORが8位ビニル基をエチル基に還元する8-ビニル還元酵素としての活性をも有することを確認した。ニトロゲナーゼ類似酵素の反応性の広さを示す実験例となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
想定される2つのプロトン供与体をブロックすることで、反応中間体を吸収スペクトルと電子スピン共鳴で検出することに成功した。特に、基質アナログとしてクロロフィル cの利用は斬新である。また、新たな阻害剤ニコチンアミドを利用した。この利用に先立ち、ニコチンアミドの阻害様式を明らかにし、ニコチンアミドがL-タンパク質からNB-タンパク質への電子伝達を阻害することを確認している。この阻害剤を利用することで、反応中間体同定に新しい切り口を見出し、反応の素過程を4段階として想定することができた。 これに加え、もう一つのニトロゲナーゼ類似酵素であるクロロフィリドa還元酵素(COR)が、これまで知られていたC7=C8二重結合還元のみならずC8位のビニル基をも還元する活性を有することを示すことに成功した。これまで単にD環(C17=C18)還元とB環(C7=C8)還元という単純な連続反応を想定していたが、B環還元の前にC8-ビニル基の還元がCORによって触媒されることが新たに明らかにされた。このことは、ニトロゲナーゼ類似酵素群の広い反応性を実証する結果である。このような広い反応性を可能としている構造基盤を明らかにすることが新たな研究目標となる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度として、観測された吸収スペクトル変化をグローバルフィッティング解析することで、プロトン供与体をブロックすることで得られた中間体の素過程スペクトルとその速度定数の推定を行う。Pchlide還元を理解する初めての反応機構の枠組み提唱を目指す。さらに、その枠組みをもとにニトロゲナーゼの反応機構と比較し、窒素還元とPchlide還元の類似点と相違点、それを裏付ける構造基盤について考察を深めたい。また、DPOR特有のC末端ドメインについて機能と構造解析を進め、ニトロゲナーゼとの構造的相違の触媒作用における機能的意義を明らかにする。また、ニトロゲナーゼ類似酵素の潜在的活性に対して、アセチレン還元やアジド還元などの想定される副反応の活性を検討する。これらの実験結果を根拠としてDPORのニトロゲナーゼ化への具体的な方針を立案する。CORについて、結晶構造解明を目指して結晶化を進める。これに併行して、部位特異的変異株の単離を進め、ビニル還元とB環(C7=C8)還元という二つの活性をささえる特異的残基の同定を進める。
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Research Products
(11 results)
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[Journal Article] An unexpectedly branched biosynthetic pathway for bacteriochlorophyll b capable of absorbing near-infrared light.2013
Author(s)
1 Tsukatani, Y., Yamamoto, H., Harada, J., Yoshitomi, T., Nomata, J., Kasahara, M., Mizoguchi, T., Fujita, Y. and Tamiaki, H.
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Journal Title
Scientific Reports
Volume: 3
Pages: 1217
DOI
Peer Reviewed
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