2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23370024
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
高橋 裕一郎 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (50183447)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 光合成 / 光化学系 / 分子集合 / サブユニット / アンテナ複合体 / クロロフィルタンパク質 / 緑化 / 光合成色素 |
Research Abstract |
光合成電子伝達系で光エネルギーを酸化還元エネルギーへ変換する光化学系は、多数のサブユニットとコファクターから構成される複合体で、集光機能をもつアンテナ複合体を結合して超分子複合体を形成する。この光化学系複合体の生合成の分子機構の解明は遅れているが、多数の成分が段階的に分子集合していくモデルが有力である。本研究ではこの段階的分子集合過程を解明するため、黄化細胞の緑化過程を利用した。緑藻クラミドモナスy-1変異株は暗所でのクロロフィル合成活性を欠損するため、暗所で培養すると黄化細胞となるが、明所ではクロロフィル合成が開始し緑化する。本研究では既に、この緑化過程中の光化学系およびアンテナ複合体の色素と構成サブユニットの蓄積状況を解析した。さらに、緑化過程の細胞からチラコイド膜を単離し、それを界面活性剤で可溶化しクロロフィルタンパク質をショ糖密度勾配超遠心法により分離した。本年度は光化学系複合体とアンテナ複合体が結合し超分子複合体を形成する過程に着目して研究を進展させた。系2複合体とアンテナ複合体(LHCII)の超分子複合体は可溶化の過程で解離してしまい解析はできなかった。一方、系1は緑化の初期に分子集合中間体でPsaGとPsaKを欠く系1コア複合体が一過性的に蓄積することが観察され、その後アンテナ複合体(LHCI)とPsaGとPsaKが結合し、成熟型の系1複合体が形成されることが分かった。また、緑化の初期に一過性的に蓄積したクロロフィルの前駆体はクロロフィルタンパク質に結合していることが分かった。また、緑化の進展に伴いクロロフィルタンパク質に結合するクロロフィル前駆体が成熟型のクロロフィルへ変換されることも明らかにされた。したがって、本実験によりクロロフィルの生合成の最後の段階はクロロフィルタンパク質上で進行する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は緑藻クラミドモナスの緑化過程の色素の蓄積量の変化を詳細に分析することにより、クロロフィルタンパク質の色素の蓄積過程の一部を明らかにした。本年度は昨年度の研究成果を発展させ、各クロロフィルタンパク質の構成サブユニットの蓄積量の変化を詳細に分析し、系1複合体の段階的分子集合過程の解明につながる分子集合中間体の同定に成功した。その結果、系1コア複合体が合成された後、アンテナ複合体(LHCI)が分子集合し、LHCIの結合を安定化すると考えられるPsaGとPsaKが最後に分子集合し、系1複合体の分子集合が完成するという興味深い結果を得ることができた。また、緑化の過程で一過性的に蓄積するクロロフィル前駆体がクロロフィルタンパク質に結合することを初めて明らかにし、さらにクロロフィルタンパク質上で成熟型クロロフィルへ変換されることも示すことができた。このクロロフィル生合成の最終段階の反応は系1と系2の光化学系複合体上だけでなく、アンテナ複合体上でも進行することを示した。
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Strategy for Future Research Activity |
光化学系複合体の段階的分子集合過程の解明をさらに進めるため、緑藻クラミドモナスの緑化に伴うクロロフィルタンパク質の生合成過程の解析を発展的に継続する。特に着目するのは、(1)9種の系1のアンテナ複合体の分子集合過程、(2)系1複合体の分子集合に必須な因子で葉緑体にコードされるYcf3とYcf4の機能解析である。9種のLHCIアポタンパク質に対する抗体は入手しているので、これらが分子集合する過程をより詳細に解析する。そのためには緑化中の細胞からチラコイド膜を単離・可溶化し、ショ糖密度勾配超遠心法でクロロフィルタンパク質の生合成中間体を単離し、そのLHCIサブユニット組成と色素組成を解析する。また、Ycf3とYcf4のそれぞれもしくは両方の過剰発現株を作出し、系1複合体の生合成に対する影響を調べる。特に光損傷からの回復にYcf3とYcf4の過剰発現がどのような影響を与えるかに着目して解析を進める。
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Research Products
(7 results)