2013 Fiscal Year Annual Research Report
P型イオンポンプ作動機序特性の分子基盤とその異常による病態
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23370058
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
鈴木 裕 旭川医科大学, 医学部, 教授 (50183421)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山崎 和生 旭川医科大学, 医学部, 講師 (60241428)
大保 貴嗣 旭川医科大学, 医学部, 准教授 (90207267)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | カルシウムポンプ / 小胞体 / 能動輸送 / 構造機能連関 |
Research Abstract |
1.Aドメイン/M2リンカー:長さとαへリックス部分構造を改変した変異体について速度論的解析を実施し、リン酸化中間体の異性化・Ca2+放出・加水分解および非リン酸化酵素のCa2+結合による活性化における本リンカーの長さと二次構造変化の意義を解明した。そして本リンカーは、領域特異的および素反応過程特異的に触媒部位と輸送部位の間の相互応答に貢献してエネルギー共役を可能にすることを示した。 2.N-Pドメイン間遠距離静電相互作用:コンピューターシュミレーションによる塩溶液中の残基間遠距離静電相互作用の解析法と静電相互作用の意義解明の実験手法を開発した。そして静電相互作用に関与すると予想したN-Pドメイン連結へリックス上残基および両ドメイン表面の荷電残基に部位特異的置換を導入して塩濃度変化の影響を速度論的に解析し、両ドメイン表面の30Åも離れた荷電残基間の遠距離静電相互作用がリン酸化中間体異性化を著明に促進すること、Pドメインへの特異的K+結合および連結へリックス上の残基はこのN-Pドメイン間遠距離静電相互作用の形成に必須な役割を果たすことを明らかとした。 3.Ca2+-ATPaseとメタルフッ素(BeF3, AlF4;, MgF4)から形成したリン酸化中間体(E2P)の基底状態・加水分解遷移状態・生成物複合体の各アナログについて、Ca2+輸送部位構造状態と細胞質ドメイン集合状態に対するpH、Mg2+、界面活性剤の影響を調べた。その結果、基底状態構造は界面活性剤で揺らぎ、中性~アルカリ性領域で輸送部位にMg2+が結合したCa2+放出直前のリン酸化中間体(E2PCa2)構造を形成すること、この状態はCa2+放出後のE2Pにおける細胞質ドメイン集合状態と著明に異なることを明らかにして、Ca2+放出を生起させる細胞質領域の構造変化の本質を理解した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画した研究は高いレベルで進行している。現在、さらに研究を展開して各成果をまとめ、数報の論文として発表する作業を行なっている。 他方、Ca2+ポンプを含めたP-typeカチオンポンプの作動機構とその差異の理解を深め、さらにポンプ1分子の構造変化をポンプ作動時に実際に解析するため、1分子観察を可能とするシステムを開発している。今後この研究についてはさらに発展させる。
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Strategy for Future Research Activity |
1. Aドメイン/M2リンカーおよびM2:アミノ酸挿入や残基削除により長さとαへリックス部分構造を改変した変異体、および残基置換変異体について、速度論的機能解析、Ca2+の結合・解離および閉塞状態の解析をすでに実施し、本リンカーおよびM2のへリック構造の変化と長さの変化の重要性について、各反応素過程において明らかにした。本年度はさらにM2の折れ曲がりとそれに関与する残基の機能的役割を解明して、触媒部位と輸送部位との間の構造変化伝達の機序をさらに深く解明し、エネルギー共役機序を深く理解する。 2. ドメイン間および蛋白・脂質極性基の遠距離静電相互作用の機能解析法の確立と応用: これまでにNドメインとPドメイン間の遠距離静電相互作用の機能解明手法を確立し、これら二つのドメインの相対的動きを誘起するために必要な原動力としてのその意義を解明した。今年度はこの手法をさらに利用して、Caポンプ蛋白とこれを埋め込んでいる膜脂質の極性基との間の静電的相互作用の機能的意義を解明する。 3. 1分子動的観察系の確立:上記2で開発したCaポンプを埋め込んだNano diskを利用してポンプの1分子動的観察を可能にするため、1分子動的解析に最適な蛍光ラベル導入のための部位特異的変異体ポンプの作成と特異的蛍光ラベル、蛍光観察系の確立、Nano diskのガラスプレート固定法の確立、について昨年度までの蓄積を基にさらに開発を進める。また、各P型ポンプの各リン酸化中間体安定構造アナログを、Pi類似体用いて開発し、Nano disk利用による1分子解析を可能とする。 4.プレセニリンと小胞体Caポンプ相互作用の意義:プレセニリンと神経細胞型小胞体Caポンプ(SERCA2b)培養細胞で共発現し、相互作用とそれによるCaポンプ制御、アルツハイマー発症変異によるポンプ機能異常を解明する。
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Research Products
(5 results)