2011 Fiscal Year Annual Research Report
ガングリオシドGM3の新たな病態生理学的意義の解明
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23370064
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Research Institution | Tohoku Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
井ノ口 仁一 東北薬科大学, 薬学部, 教授 (70131810)
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Keywords | ガングリオシド / T細胞 / アレルギー / 喘息 |
Research Abstract |
我々は,ガングリオシド系列の生合成における二つの鍵酵素であるGM3合成酵素(GM3S)およびGM2/GD2合成酵素(GM2/GD2S)の各遺伝子改変マウス(K O)を用いてT細胞受容体を介した活性化を検討したところ,GM3S KOではCD4T細胞の機能が重度に障害していたがCD8T細胞は正常であった。対照的に,GM2/GD2S KOではCD4T細胞は正常であったがCD8T細胞は重度に障害していた。この結果は,T細胞サブセットごとにその機能発現に必要なガングリオシド分子種が異なることを示している。従って本研究においては,胸腺におけるT細胞分化過程(レパトア選択)は,T細胞サブセットごとの糖脂質発現の選択過程でもあり,この糖脂質選択は機能的T細胞への成熟に不可欠な現象であること,即ち,Glycolipid Selection is indispensable for Repertoire Selectionという作業仮説を提唱している。さらに、オボアルブミン(OVA)で惹起したマウス喘息モデルにおいて,GM3S KOでは,肺洗浄液中の浸潤細胞(特に好酸球)およびTh2サイトカイン(IL-4,IL-5)の著しい減少が認められ,さらに血清中抗原特異的IgEの出現が抑制され,組織学的にも気道分泌の抑制が確認された。本研究成果は、2012年1月17日付けの米国科学アカデミー紀要PNASに公開された。 現時点において、免疫担当細胞に選択的に作用する薬剤は開発されておらず、非特異的な免疫抑制による重篤な副作用が問題となっている。今後、ガングリオシドが「T細胞」へどのように関わり、制御しているかを解明することにより、より効果的、副作用のない安全な免疫制御剤の開発基盤の確立が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
糖脂質「ガングリオシド」による免疫制御機構の解明に向けて、ガングリオシド分子種特異的なヘルパーT細胞とキラーT細胞選択的制御を発見し、世界に先駆けて論文発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究計画のもう一つの重要課題である生活習慣病におけるガングリオシドの病態生理学的意義について、研究を推進し24年度は論文化を目指している。
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Research Products
(14 results)