2012 Fiscal Year Annual Research Report
ニホンザルの社会構造の個体群間差異:その遺伝的背景を探る
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23370099
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中川 尚史 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (70212082)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川本 芳 京都大学, 霊長類研究所, 准教授 (00177750)
半谷 吾郎 京都大学, 霊長類研究所, 准教授 (40444492)
中道 正之 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (60183886)
村山 美穂 京都大学, 野生動物研究センター, 教授 (60293552)
山田 一憲 大阪大学, 人間科学研究科, 講師 (80506999)
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Project Period (FY) |
2011-11-18 – 2015-03-31
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Keywords | ニホンザル / 社会構造 / 個体群間変異 / 遺伝子 / 環境 |
Research Abstract |
餌付け群である淡路島群と勝山群(岡山県)にて、小麦を半径8m以内の円内に集中的に播いた際の最大同時採食個体数を数えるという寛容性を測る野外実験を行った。分析の結果、攻撃交渉の頻度に関して、2群間に大きな差は見られなかったが、勝山群では全体の14%の個体が円内で小麦を拾った一方、淡路島群では70%の個体が円内で小麦を拾っていた。野生群については屋久島Umi群において乳母行動のデータ収集、金華山A群においては、DNA試料としての糞採取を行った。 養育行動と関連すると言われているオキシトシン受容体遺伝子のエクソン領域におけるアミノ酸翻訳領域の全長配列をニホンザルで初めて決定し、それを群間、群内で比較した。8地域(高浜、白山、嵐山、淡路島、勝山、高崎山、幸島、屋久島)の154個体より得た試料に対して、オキシトシン受容体遺伝子のアミノ酸翻訳領域1170bpを3組のプライマーを用いてPCR増幅し、塩基配列を決定した。第2 エクソンにおいてアミノ酸変異(Thr→Ala)をともなうSNP(A1045G)が見つかった。ヒトの社会交渉を促進するSNP(rs53576)に近傍のイントロン領域に2つのSNPが見つかった。特に、イントロン領域のSNPに関しては、勝山群と淡路島群との間でアリル頻度に偏りが見られた。 集団遺伝学上重要な個体群からの採糞を、愛媛県玉縄山脈と徳島県中央構造線南部の山塊(那賀町)について行った。初年度に行った香川県讃岐山脈の糞と合わせて解析し既知の近隣個体群と比較したところ、玉縄山脈のサルは滑床に直結せず別の袋小路となっていること、那賀町で見つけた新しいタイプは徳島沿岸部と讃岐山脈・淡路島をつなぐ中間タイプであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
乳母行動を焦点とした必然的な結果として赤ん坊が十分な数生まれる必要がある。野生群は群れサイズも小さく出産間隔が2年を超えることもあって、平成24年度は運悪く対象群において十分な数の赤ん坊が生まれず、データ収集ができなかったが、繰り越した平成25年度には、屋久島群において数多くの赤ん坊が生まれ、無事乳母行動のデータが収集できた。しかし、金華山群においては依然生まれた赤ん坊の数が少なく、データ収集は次年度以降の課題となった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、乳母行動について屋久島群で得られたデータを解析するとともに、金華山群での赤ん坊の出産を待って、比較可能なデータを収集する予定である。また、攻撃性関連性格遺伝子(モノアミノキシダーゼ遺伝子、アンドロゲン受容体遺伝子)、および養育行動関連遺伝子(オキシトシン受容体遺伝子)について、まだ未解析の屋久島、金華山の両野生群について解析を行っていく。
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Research Products
(17 results)