2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23380047
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
有岡 学 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (20242159)
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Keywords | ホスホリパーゼA2 / リン脂質 / MAPキナーゼ / 生存・分化 |
Research Abstract |
課題1 麹菌におけるPLA2の生理機能の解析 1)麹菌細胞質型ホスホリパーゼA2(cPLA2)様遺伝子AoplaA過剰発現株の表現型解析 AoplaA遺伝子をα-アミラーゼ遺伝子(amyB)プロモーターの下流に連結し、麹菌で高発現させたところ、特に低温条件下(16℃)での生育が遅延することを見出した。AoPlaAの活性中心と予想されるSer266(ヒトcPLA2αのSer228に相当)をAlaに置換した変異型AoplaAを高発現する株では、その生育はAoplaAを高発現しない親株と同程度であった。このことから、AoplaA高発現株の生育遅延がAoPlaAの酵素活性が過剰に上昇したためであることが強く示唆された。 2)麹菌カルシウム非依存性PLA2(iPLA2)の解析 麹菌(および糸状菌)iPLA2についてはこれまで全く解析が行われていない。そこで、まず相同性検索から見出された麹菌iPLA2相同配列について、5’-および3’-RACE解析を行い、転写および推定ORF領域を確定した。続いて全長cDNAの取得を行い、N末端およびC末端にEGFPを連結した融合タンパク質の局在を解析した。その結果、両タンパク質とも細胞質に局在し、部分的に細胞膜に集積する様子が観察された。 課題2 神経栄養因子とリゾリン脂質の協調的作用 神経栄養因子NGFをPC12細胞に与えると細胞内シグナル伝達系が活性化してMAPKの活性化が誘導されるが、リゾホスファチジルコリン(LPC)が共存するとそれが顕著に亢進するという現象を見出した。LPC以外のリゾリン脂質についても調べたところ、MAPK活性化の亢進はLPCにのみ見出された。一方、チロシンキナーゼ型受容体を持つNGF以外の細胞増殖・栄養因子である冗費増殖因子EGFやインスリン様増殖因子IGF-1などではLPCとの協調的作用は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
課題1では、予定していた変異遺伝子の作製、麹菌形質転換体の取得に成功し、推定酵素活性中心を変異させると生育遅延という表現型を示さなくなることがわかり、予想通り酵素活性の過剰発現が生育遅延の原因であることがわかった。また、iPLA2相同配列の取得に成功し、その機能解析に着手した。課題2では、解析している現象がNGF経路とLPCに特異的なものであることがわかり、次年度以降の研究の方向性決定に関する重要な手がかりが得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
特段の変更は必要ないので、計画通り研究を遂行する予定である。
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Research Products
(17 results)