2011 Fiscal Year Annual Research Report
海洋性カロテノイドの慢性炎症疾患予防作用の基盤となる組織・細胞間調節機能の解明
Project/Area Number |
23380120
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
細川 雅史 北海道大学, 大学院・水産科学研究院, 准教授 (10241374)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安井 由美子 酪農学園大学, 獣医学部, 講師 (90434472)
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Keywords | 慢性炎症 / カロテノイド / 抗肥満作用 / 潰瘍性大腸炎予防 / サイトカイン / フコキサンチン / ペクテノロン / 抗癌作用 |
Research Abstract |
生体内組織の慢性炎症は、様々な疾病の発症に関わる病態基盤であるため、その予防や改善が極めて重要である。本研究では、海洋性カロテノイドの優れた抗炎症作用を明らかにするため組織・細胞間相互調節機能による抗炎症機構の解明を目的とした。 (1)褐藻由来のフコキサンチン(FX)は、肥満の進行中にみられる脂肪組織へのマクロファージの浸潤を抑制するとともに、CD8+T細胞の浸潤を抑制した。 (2)T細胞の遊走活性を示すケモカインのSDF-1やRANTESの産生が、Fxを投与した肥満/糖尿病KK-Ayマウスの脂肪組織で抑制されることを見出した。特に、本研究ではSDF-1が脂肪細胞によっても産生されることを明らかにし、更にFxンがその産生を抑制することを見出した。 (3)SDF-1の受容体であるCXCR4のmRNAは脂肪組織中の免疫細胞を含むSVF画分で高発現しており、Fxはその発現量を低下させた。 (4)FXの生体内代謝物のフコキサンチノールは、LPS刺激したマクロファージに対しTNF-・およびTLRのmRNA発現量を抑制し、パルミチン酸処理した脂肪細胞に対してマクロファージの遊走能を持つMCP-1の分泌を抑制した。 これらの結果は、Fxが脂肪細胞とマクロファージやCD8+T細胞の相互作用を制御して、肥満の進展にともなう脂肪組織の慢性炎症を抑制すること示すものである。 一方、(5)FXはDSSによって引き起こされる潰瘍性大腸炎を抑制するとともに、大腸発癌に対する予防を示し、その作用機構としてNF-kBの活性化抑制を介した炎症抑制効果を見出した。また、(6)ホタテの卵巣に含まれるペクテノロンのマクロファージに対する抗炎症機構として、転写因子のNF-kBに加えAP-1の活性化抑制作用を明らかにした。よって、Fxの大腸組織炎症における抑制効果の解明とペクテノロンの炎症抑制作用による疾病予防効果が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究により、Fxがメタボリックシンドロームの発症と密接にかかわる脂肪組織の慢性炎症を抑制する作用機構を明らかにするとともに、脂肪細胞が産生する新たな制御因子の解明を示唆する新規知見を得た。また、Fxによる潰瘍性大腸炎及び大腸癌に対する予防効果とペクテノロンによる炎症性因子の産生抑制能を見出すとともに、その分子機構としてNF-κBやAP-1の活性化抑制機構を明らかにした。これらは、平成23年度当初の研究計画以上に進展した成果であり、研究目的を十分達成するものである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、脂肪組織と骨格筋との組織間相互作用に着目して研究を展開し、フコキサンチンの抗糖尿病作用機構としての炎症抑制作用を明らかにすることを目的とする。また、フコキサンチンの大腸組織による抗炎症および大腸がん予防作用を見出していることから、それらに関わる大腸組織と免疫系細胞の相互作用機構の詳細な解明を進める。更に、海洋性カロテノイドの抗炎症作用に関わる分子機構に関しては、特にマクロファージに対して成果を得ているが、その他の脂肪細胞や大腸細胞に対する分子機構に関しても同様に解析を進める。
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