2011 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝子改変マウスにおける痛覚反射と運動反射の定量的解析
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23380170
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
伊藤 茂男 北海道大学, 大学院・獣医学研究科, 教授 (40109509)
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Keywords | 脊髄 / 新生マウス / 鎮痛薬 / 反射電位 / モルヒネ |
Research Abstract |
遺伝子改変マウスでの摘出脊髄標本からの反射電位測定実験系を確立するために、まず正常のマウス(C57BL)を用い実験を行った。新生マウスを安楽殺後、脊髄を摘出し、人工脳脊髄液で還流し、約27℃に保った実験漕内に摘出脊髄を固定した。人工脳脊髄液は常に95%O_2+5%CO_2で通気することで、標本への酸素供給を維持した。脊髄後根を刺激電極内に吸引し、電気刺激することにより、脊髄前根を吸引した記録電極より反射電位を測定する実験系を確立した。反射電位として、潜時の短い単シナプス反射電位(MSR)と潜時が長い遅発性後根電位(sVRP)が記録された。これらの反応は、ラットから記録されるものと電気生理学的性質が類似していたが、刺激強度-反応関係は、ラットと比較して左にシフトしていた(より弱い刺激で反応が最大に達した)。また、ラットと同様に、マウスにおいても出生後1週間までは、本実験系を用いて反射電位を測定することが可能であることが示されたが、1週間を超えると反射電位の振幅は著しく減少し、実験に供することが極めて困難であることもわかった。これは、ミエリン鞘の発達と、低酸素条件に対する耐性が加齢に伴い減少することが原因と考えられる。 マウス脊髄に鎮痛薬であるモルヒネを適用すると、MSRには影響を与えずに、sVRPだけが濃度依存性に抑制された。sVRPは脊髄で痛覚を伝える侵害受容経路の神経活動を反映していると考えられており、モルヒネがマウス脊髄の他の神経経路には影響を与えずに、痛覚だけを選択的に抑制することが電気生理学的に示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の主要な目的である新生マウスを用いた反射電位測定実験系を確立する目的が十分に達成されたため。
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Strategy for Future Research Activity |
α2Aノックアウトマウスを用いた検討をすでに始めており、さらに他の受容体サブタイプ欠損マウスの解析にも順次着手する予定である。脊髄スライス標本を用いたイメージング法による実験系の確立のため、新生動物から摘出した脊髄を用い、反射電位との反応性を比較検討する計画である。
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