2012 Fiscal Year Annual Research Report
マレック病ウイルスによる免疫抑制機構の解明とその免疫増強アジュバントへの応用
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23380176
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大橋 和彦 北海道大学, (連合)獣医学研究科, 教授 (90250498)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村田 史郎 北海道大学, (連合)獣医学研究科, 助教 (10579163)
今内 覚 北海道大学, (連合)獣医学研究科, 准教授 (40396304)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 獣医学 |
Research Abstract |
本年度は、ニワトリPD-1/ PD-L分子の発現をタンパクレベルで解析し、さらにPD-1/ PD-L経路による免疫抑制能を解析した。ニワトリPD-1、PD-L1、PD-L2をFc融合タンパク質として調製して(それぞれPD-1-Ig、PD-L1-Ig、PD-L2-Ig)、フローサイトメトリー法にてそれらの発現を解析した結果、マイトジェン刺激により活性化したニワトリ脾細胞でPD-1、PD-L1、PD-L2と結合する分子の発現が上昇することが示され、ニワトリにおいても炎症反応の収束にPD-1/ PD-L経路が関与する可能性が示唆された。さらにMD腫瘍由来細胞株に対してもPD-1-Igの結合が認められ、MD腫瘍がPD-Lを表出することで宿主免疫応答を回避することが予想された。またPD-L1-IgおよびPD-L2-Igにも結合したことからPD-1やその他免疫抑制因子を発現している可能性も示唆された。そこでPD-1-Ig存在下でMD腫瘍病変部由来細胞を培養し、PD-Lからのシグナルを阻害したところ、細胞増殖の促進とMDVゲノム量の増加が認められた。PD-L1が活性化CD8+T細胞の存続に必要であるという報告もあり、今回確認された現象はPD-1-IgがPD-L1発現細胞へ活性化シグナルをもたらしたことによる可能性もある。MDVの感染や腫瘍化T細胞に関連する免疫因子は他にも多数あり、今後の検討が必要である。MDV強毒株感染鶏ではPD-1およびPD-Lの発現動態が、非感染鶏と比較して変化する。一方、本研究においてMDワクチン株(CVI988)接種後に強毒株で攻撃した鶏群では、PD-1やPD-Lの発現上昇やその持続がほとんど認められなかった。以上より、MDの病態形成・進行およびワクチンによる抗腫瘍効果に、PD-1/PD-L経路が寄与していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は、主に遺伝子レベルでのPD-1/PD-Lの発現解析を行ってきたが、本年度は、より詳細な解析を実施するために、組換えPD-1/PD-L分子を調製して、タンパクレベルでのPD-1/PD-L経路の解析を行った。その結果、遺伝子レベルでの解析結果とよく一致した成果が得られ、概ね今年度達成を目指していた研究成果を得た。また今年度調製した組換えPD-1/PD-L分子は、次年度に予定している実験感染鶏を用いた感染防御試験に用いる予定であり、次年度の研究計画への準備も予定通り進行した。このように本年度の研究計画は目的通り概ね達成されたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度調製した組換えPD-1/PD-L分子を用いてより詳細な免疫抑制経路の解析が次年度必要である。前年度までの解析により、解明されてきた免疫抑制因子の機能を鶏を用いた感染実験にて確認し、さらにこれらの免疫抑制因子を阻害することで免疫抑制からの回復・免疫増強作用が賦与できるか否かを検討する。マレック病ウイルスなど免疫抑制を引き起こす病原体を1日齢ヒナあるいは成鶏に接種して鶏に実験的に免疫抑制を誘導した後、その前後に前年度までに調製した組換えPD-L1あるいは各種抗免疫抑制因子抗体を投与する(混合カクテル製剤についても検討する)。そして経時的に感染鶏から採取したリンパ球(末梢血単核球)のサイトカイン産生能を、定量的Real-time PCR法にて解析して、免疫抑制効果の低減や解除、感染防御効果の増強などを検討する。またこれまでヒト等では副作用などは報告されていないが、PD-L1あるいは各種抗免疫抑制因子抗体投与による副作用なども調査する。
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