2012 Fiscal Year Annual Research Report
筋性疼痛における各種神経栄養因子の関与と筋における産生・作用機構
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23390154
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
水村 和枝 中部大学, 生命健康科学部, 教授 (00109349)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 筋性疼痛 / 神経成長因子 / グリア細胞由来神経栄養因子 / 遅発性筋痛 / ATP / TRPV1 / TRPV4 |
Research Abstract |
筋性疼痛のメカニズムの解明をめざし。運動後遅れて現れる筋性疼痛(遅発性筋痛)のモデルを中心に、ほかのモデルも作成し、各種神経栄養因子がどのように関与しているか調べ、その筋性疼痛に関与している範囲を明確にすること、これら神経栄養因子の痛み受容器に対する作用機構を明らかにし、さらにはこれら因子の筋における産生に関わる因子を明らかにすることを目的として実験を行った。 1)遅発性筋痛をトリガーするブラジキニン様物質を遊離するATPの放出が、短縮性収縮や伸張のみよりも伸張性収縮で大きいことを明らかにした。 2)単独では筋機械痛覚過敏を引き起こさない用量の神経成長因子(NGF)とGDNF(グリア細胞由来神経栄養因子)を同時に筋注すると、強くかつ2日間も持続する筋機械痛覚過敏が生じることを明らかにした。 3)遅発性筋痛にTRPV1とTRPV4の2つのTRPチャネルが関わっていることを明らかにした。作用部位は、TRPV1はNGFによる痛覚過敏の発現に、TRPV4はGDNFの産生過程とGDNFによる痛覚過敏の発現の両方に関わっていることが示された。(論文revision中)。 4)遅発性筋痛状態の筋の侵害受容器は、機械刺激に対しては感作されているが熱には感作されていない。しかし、筋侵害受容器の熱反応に対してもNGFは感作を生じることを明らかにした(投稿中)。NGFが痛覚過敏を起こしている遅発性筋痛状態で熱に対する感作が見られないのは、おそらくNGFの濃度が低いためか、または協同的に働く物質が熱に対する感作を引き起こさないためであろうと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1)虚血モデル作成は試みたもののうまく機能しなかった。 2)運動形態によるATP放出量の違いは明らかにできたが、ブラジキニン遊離量の測定にまで広げることができなかった。 3)NGFによる筋侵害受容器の感作機構では、熱による感作があることを明らかにした。培養後根神経節細胞におけるパッチクランプ記録は開始した。3週令の若い動物を使用できないか試みたが、結局生後2週令までの新生動物を使用したほうが良いという結果をえた。現在NGFの30分投与で、機械感受性電流を示す細胞の割合、機械感受性電流の型の変化、機械感受性電流の大きさなどに違いが生じないか調べ、多少の増加傾向はみられるものの、まだ結論を得るところまでにいたっていない。 4)NGFとGDNFの相互作用に関しては、単独では筋機械痛覚過敏を引き起こさない用量のNGFとGDNFを同時に筋注すると、強くかつ2日間も持続する筋機械痛覚過敏が生じることを明らかにした。間にCGRPが介在している可能性を調べたが、結論を得るまでの例数を集めることができなかった。 5)当初の実験予定にはなかったが、遅発性筋痛におけるTRPV1とTRPV4の役割を調べ、論文発表する段階までにこぎつけた。 6)NGFの筋侵害受容器の熱に対する反応も感作することを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
1)ラットを用いた虚血モデル、労作性筋痛モデルの作成を継続して行う。このモデルの機械痛覚過敏におけるNGF,GDNFの関与の有無を、それらのmRNA発現の変化の解析、抗体投与によって痛覚過敏が減弱するかなどの点から調べて明らかにする。 2)筋の収縮形態による遅発性筋痛発現の有無の原因を探るため、ATP遊離やブラジキニン遊離にかかわる因子をさぐる。GDNF産生経路に関わっていることを昨年度に明らかにしたTRPV4-/-マウスも用いて実験する。インテグリン、SAC(stretch activated channel)などの関与を薬理的に調べる。ATP遊離に関しては実時間での観察をするため、培養筋細胞を用いLuciferin-luciferaseによるイメージングも試みる。イメージング実験は名古屋大学医学系研究科細胞生物物理学・イメージング生理学講座の協力を得て実施する。 3)NGFとGDNFの相互作用の検討を継続する。両者の間にCGRPが介在する可能性をCGRP拮抗薬を投与することによって調べる。 4)NGFによる侵害受容器の感作機構を明らかにするため、培養後根神経節細胞からの機械感受性電流のパッチクランプ記録をさらに継続し、TRPV1ノックアウトマウスにおいても解析を行う。
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