2012 Fiscal Year Annual Research Report
糖尿病とアルツハイマー病の相互病態修飾におけるインスリン・シグナリングの役割
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23390187
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
里 直行 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70372612)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 真一郎 独立行政法人国立循環器病研究センター, その他部局等, 研究員 (20396740)
村山 繁雄 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), その他部局等, その他 (50183653)
内尾 こずえ 独立行政法人医薬基盤研究所, その他部局等, 研究員 (70373397)
上田 裕紀 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90543463)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ベータ・アミロイド / タウ・リン酸化 / 恒常性破綻 |
Research Abstract |
孤発性アルツハイマー病(AD)の遺伝的危険因子としてAPOE遺伝子多型が知られているが,近年、糖尿病がADの後天的危険因子であることがコンセンサスを得てきている。その糖尿病がAD発症促進因子である機序に関してはいまだ十分に解明されていない。我々はADモデルマウスとされているアミロイド前駆体タンパク(APP)の過剰発現マウスではAD病理の神経原線維変化の本態とされるタウのリン酸化の亢進は認められないが、糖尿病を合併した高齢APPマウスではそれが認められることを見い出した。 糖尿病がADをいかに促進するか、という問いに対しては、Kalariaによる総説(Nat Rev Neurol 5:305, 2009)に見るように、糖尿病の存在はAD病理、すなわち老人斑や神経原線維変化を増加させない。それを支持するように、我々の糖尿病合併ADモデルにおいても糖尿病はAD病理を増悪させなかった。しかし、その一方で、脳内のインスリン・シグナリングが低下していることが判明した。我々は18ヶ月齢の高齢糖尿病合併ADモデルにおいてタウのリン酸化亢進を見出した。興味深いことにADマウス、糖尿病マウスではタウのリン酸化はコントロール・マウスと同程度であるのに対し、糖尿病合併ADマウスのみにおいてタウのリン酸化亢進が認められた。In vitroではベータ・アミロイドだけでタウのリン酸化を誘導することから、in vivoでは生体の防御反応が働き、タウのリン酸化が抑えられるが、糖尿病が加わることにより、ホメオスターシスが破綻するのではないか、と仮説を立てている。 またADモデルマウスにおける長期間の高脂肪食負荷による血中ベータ・アミロイドの上昇を見出しており、ADと糖尿病の相互病態修飾の機序に関与している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
インスリン・シグナルの欠損によりタウのリン酸化が亢進することが報告されている。今回、糖尿病合併アルツハイマー病マウスにおいてタウのリン酸化亢進が認められたことから、以前に見出していた本マウスにおけるインスリン・シグナルの低下との因果関係が示唆された為。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、ベータ・アミロイドをターゲットにした切断酵素阻害薬やワクチンなどの疾患修飾薬の臨床試験が行われているがその開発の達成が難渋している。その原因としてそれぞれ発がん性や脳髄膜炎などの副作用も示唆されているがより根本的な問題があると考えられている。臨床において記銘力障害を主訴に来院する軽度認知機能障害の段階であっても側頭葉内側・海馬に萎縮が認められ、さらにベータ・アミロイドはその軽度認知機能障害を呈する10~15年前から集積し始めている。しかし、剖検において老人斑優位型の高齢者は認知機能は正常であることから、ベータ・アミロイドはAD発症に必要であるが十分でないことが示唆されており、我々の研究結果もこのことを支持していると考えられる。したがって本研究により明らかになる分子はAD発症にベータ・アミロイドとともに必要かつ十分条件となる分子であり、ADの根本的な予防・治療薬のターゲットとなると考えられ、その同定を推進していく。 高齢糖尿病合併ADマウスの脳に起こっている変化を免疫組織学的手法を用いて、空間的に分子レベルで明らかにする。マウスで明らかにされた分子の変化に関して、糖尿病を合併したADのヒト剖検脳を用いて、確認する。さらには時間・空間的にベータ・アミロイドの発現を作動させるマウスを作成し、これらのマウスに高脂肪食負荷を行い、インスリン抵抗性を惹起させることにより、タウのリン酸化の促進、神経変性、脳萎縮を誘導し、これらの経時的な生体の反応を詳細に解析することによって、βアミロイド集積に対する生体の防御反応と、インスリン抵抗性、糖尿病によるその破綻の分子機序を時間・空間的に明らかにし、ターゲット分子を絞り込んでいく。
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Research Products
(22 results)
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[Journal Article] Differential Regulation of Amyloid Precursor Protein /Presenilin 1 Interaction during Aβ40/42 Production Detected Using Fusion Constructs
Author(s)
Naoyuki Sato, Masayasu Okochi, Mitsuru Shinohara, Gopal Thinakaran, Shuko Takeda, Akio Fukumori, Motoko Shinohara-Noma, Mari Mori-Ueda, Hizuki Hamada, Masatoshi Takeda, Hiromi Rakugi, Ryuichi Morishita
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Journal Title
PLoS ONE
Volume: 7(11)
Pages: e48551
DOI
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