2011 Fiscal Year Annual Research Report
マイクロRNA-33a/bによるHDLコレステロール制御機構の解明と治療への応用
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23390211
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
尾野 亘 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00359275)
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Keywords | マイクロRNA / HDL-C / 動脈硬化 |
Research Abstract |
miR-33の生体での標的遺伝子については、ABCA1のみが確認されている。しかしながら、miR-33の生体内での標的遺伝子はその他にもある可能性がある。そこで、肝臓、脂肪、心筋、骨格筋においてcDNAマイクロアレイ解析を行い、標的遺伝子の候補を絞った。さらに、miR-33の過剰発現、3’UTRを用いたレポーターアッセイにより確認し、臓器特異的miR-33トランスジェニックマウスにおいても標的遺伝子となっているかどうかを確認した。この標的遺伝子の欠損マウスを導入し、次年度の研究の準備を行った。 miR-33欠損マウスにおいては血中HDLコレステロールがオスで22% メスで39% 増加していたが、実際にこのHDLの上昇が動脈硬化病変の改善につながるかどうかを、動脈硬化を呈するモデルマウスとの交配実験において検討を行った。 さらに、ABCA1およびHDLコレステロールは抗炎症作用を持ち、HDLコレステロールは抗酸化作用も併せ持つ。高濃度(0.5M)の塩化カルシウム容液を大動脈壁に塗布し炎症を惹起させると大動脈瘤が形成される。このモデルをmiR-33+/+とmiR-33-/-に作成し、病変の違いについて検討を開始した。 ヒトでは、マウスと異なり、中性脂肪の合成に関わるSREBP-1のイントロンにもmiR-33bが存在する。SREBP-1はインスリンによって活性化され、とくに絶食後の再摂食時に数十倍まで発現上昇が起きる。したがって、肥満者においてはさらに、miR-33bによるABCA1蛋白発現の低下と血中HDLの低下が生じる可能性がある。しかしながら、マウスにはSrebp2のイントロンのmiR-33しか存在しないため、miR-33bの生体での検討が行えない。今回、Srebp1のイントロンにmiR-33bをノックインしたマウスを作成を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画では、1)我々の作成したmiR-33(miR-33a)欠損マウスの解析を行うとともに、 2)ヒトでの病態を解析するために、miR-33bをSrebp1にノックインしたマウスを作成することが本年度の計画であった。 具体的には、cDNAマイクロアレイ解析を行い、標的遺伝子の候補を絞った。さらに、miR-33の過剰発現、3’UTRを用いたレポーターアッセイにより確認し、臓器特異的miR-33トランスジェニックマウスにおいても標的遺伝子となっているかどうかを確認した。この標的遺伝子の欠損マウスを導入し、次年度の研究の準備を行った。また、miR-33欠損マウスのHDLの上昇が動脈硬化病変の改善につながるかどうかを、動脈硬化を呈するモデルマウスとの交配実験において検討を行った。さらに、塩化カルシウムによる大動脈瘤モデルをmiR-33+/+とmiR-33-/-に作成し、病変の違いについて検討を開始した。その他、大動脈縮窄モデルの作成も開始した。 また、ヒトでは、マウスと異なり、中性脂肪の合成に関わるSREBP-1のイントロンにもmiR-33bが存在する。SREBP-1はインスリンによって活性化され、とくに絶食後の再摂食時に数十倍まで発現上昇が起きる。したがって、肥満者においてはさらに、miR-33bによるABCA1蛋白発現の低下と血中HDLの低下が生じる可能性がある。しかしながら、マウスにはSrebp2のイントロンのmiR-33しか存在しないため、miR-33bの生体での検討が行えない。今回、Srebp1のイントロンにmiR-33bをノックインしたマウスを作成を開始した。 当初の計画通り、順調に研究目的が達成されている。引き続き目標に向かって精力的に研究を展開していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、上記の研究において、動物モデルの完成と評価を行っていく。具体的には、動脈硬化におけるmiR-33の働きを解明するとともに、動脈瘤や心肥大における働きにも広げて解析していく。 また、miR-33bのSrebp1へのノックインマウスの解析を行う。miR-33ノックインマウスにおいて、絶食・再摂食によるSrebp1およびmiR-33b発現変化について検討する。次に、高脂肪食負荷、ob/obマウスとの交配により、肥満モデルを作成する。血中脂質のプロファイル、および(前年度に検討した)miR-33の標的遺伝子の変化について解析する。 さらに、miR-33bノックインマウスおよびmiR-33欠損マウスとの比較実験によって、ヒトのmiR-33a/bがある場合と完全にない場合の病態および脂質プロファイルの差異を検討する。また、ApoEノックアウトマウスとこれらのマウスの交配実験によって、動脈硬化病変の違いについても検討を行う。 さらに、ヒトでのmiR-33a/bの発現レベルと病態との関係についても詳細に検討を行っていく。具体的にはヒトでの肥満やスタチンの内服状況とmiR-33a/b発現、血中HDL-Cレベルとの関係が明らかになると考えられる。 さらに臓器特異的miR-33欠損マウスの作成をめざし、準備をおこなう。当研究室においては遺伝子改変動物を作成することには実績があり、問題なく作成が可能となると考えられる。 本研究を推進していくことにより、イントロン性miR-33a/bの働きと、宿主遺伝子の関係が詳細に判明し、特に新規の動脈硬化抑制法の開発につなげることが可能となると考えられる。
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