2011 Fiscal Year Annual Research Report
腎・代謝・免疫調節因子としてのNGALの病態生理的意義の解明
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23390225
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
森 潔 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60343232)
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Keywords | 腎臓学 / 慢性腎臓病 / リポカリン / 肥満 / 脂肪 / 好中球 / 複合体 / 存在様式 |
Research Abstract |
雄 Ngal(-/-)及び(+/+)マウスにアデニン含有食を与えると (-/-)のほうが有意に悪い腎機能を示し、この慢性腎臓病モデルにおけるNgalの腎保護作用が明らかとなった。また尿中Ngal濃度による慢性腎臓病患者の腎機能悪化の予測能力は、蛋白尿よりも優れていた。 またNgal(-/-)マウスに高脂肪食を与えると、(+/+)マウスに比べて、摂食量が多いにも関わらず体重増加が抑制されており、耐糖能・インスリン感受性が良好であり、Ngalには脂肪蓄積促進作用があることが示された。 骨髄移植を受けた症例あるいは転写因子C/EBPe(-/-)マウスを用いた検討から、血中Ngalの約80%は好中球由来であることを明らかにした。一方、尿中Ngalについては、健常人では主成分がNgal monomerであるのに対して、慢性腎臓病では分子量250kDa以上の複合体も尿中に検出されることが明らかとなり、生体内におけるNgalの存在様式の複雑性が解明された。また尿中Ngal monomerは慢性腎臓病において糸球体濾過量と負の相関、腎生検で評価した尿細管萎縮・間質線維化とは正の相関を示した。 さらに培養神経細胞を用いた検討により、Ngalは鉄キレート作用により、神経細胞の細胞死・遊走・突起形成を促進した。またNgalはastrocytesやmicrogliaからケモカインCXCL10の分泌を増加させることにより神経細胞などの中枢神経系細胞の遊走を促進した。 以上の成績より、腎障害と代謝・免疫・神経系の連関に関する新しい知見が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(理由) 上述のように、当研究内の複数のプロジェクトについて計画通りの成果を得て、一部は投稿に至っているため。
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Strategy for Future Research Activity |
①Ngalの腎保護作用に関する新たな分子機構の解明: 腎虚血再潅流障害、腎亜全摘後の代償性肥大性の慢性腎障害におけるNgalの意義を報告してきた。次に第三のモデルとしてマウスにアデニンを長期投与して慢性腎臓病モデルを作成することにより、Ngal欠損マウスでは野生型マウスよりも腎機能の悪化が早いことを見出した。今後、マイクロアレイ及びPCRアレイにより、Ngalの新しいシグナル経路の同定を目指す。 ②ミクログリア・ニューロンにおけるNgalの意義の解明: マウスにLPSを投与し、脳内ミクログリアにてNgal発現が強く誘導されることを確認する。野生型及びNgal欠損マウスからミクログリアの初代培養株を樹立して、刺激に対するM1/M2反応の強度を検討する。ニューロンに対するNgalの作用を明らかにするために大脳皮質ニューロンの培養細胞にNgalを添加し、NOあるいはTNFaによって惹起される細胞死への影響を検討する。 ③肥満・エネルギー代謝におけるNgalの意義と作用機序の解析: 肥満者ではやせた者に比べて血中Ngalが1.5倍に増加している。さらにNgal欠損マウス及び野生型マウスに高脂肪食をあたえたところ、欠損マウスのほうが体重増加、脂肪蓄積、インスリン抵抗性発現が有意に抑制されていた。今後、摂食量、熱産生量、褐色脂肪における熱産生調節因子の発現に対するNgal欠損の影響と作用機序を検討する。
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