2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23390426
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
高見 正道 昭和大学, 歯学部, 講師 (80307058)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田村 智彦 横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50285144)
上條 竜太郎 昭和大学, 歯学部, 教授 (70233939)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 細胞分化 / 骨代謝 / 自然免疫 / 破骨細胞 / マウス |
Research Abstract |
Toll-like receptors (TLRs)は生体内に侵入してきた細菌やウイルスなどの構成成分を認識し、免疫応答を惹起する微生物センサーである。すでに9種類以上のTLRs(マウス:TLR1~9、ヒト:TLR1~10)が同定されており、それぞれ特有のリガンドをもつ。細菌の構成成分の1つであるLipopolysaccharide (LPS)はTLR4のリガンドであり、歯周病における炎症とそれに伴う骨破壊を誘発するが、他のTLRsと骨代謝との関係については不明な点が多い。本研究では、ウイルスの二本鎖RNAや人工的に合成した二本鎖RNAであるPoly(I:C)[ポリイノシン・ポリシチジン]を認識するTLR3が、骨代謝に及ぼす影響とその作用メカニズムについて解析した。Poly(I:C)またはLPSをマウスの頭蓋骨上部に注射し、5日後にμCTを用いて解析したところ、LPSは骨破壊を誘発したのに対し、Poly(I:C)は骨破壊を誘発しなかった。次に卵巣摘出を施した骨粗鬆症モデルマウスにPoly(I:C)を尾静脈経由で3日毎に4週間投与し、脛骨の骨量を計測した。その結果、Poly(I:C)投与群の骨量は、対照群(リン酸緩衝液投与)の1.6倍に増加していた。この作用は正常なマウスを用いた時も同様に認められた。Poly(I:C)を投与したマウスの脛骨切片を解析したところ、破骨細胞の数が対照群の半分に減少しており、Poly(I:C)が生体内で破骨細胞分化を抑制したことが判明した。その抑制メカニズムを解明するため、破骨細胞の分化誘導培養系にPoly(I:C)を添加したところ、濃度依存的な分化抑制作用が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H24年度の目標は、自然免疫シグナルがどのようなメカニズムで骨量を増加させるか、そのメカニズムを解明することであった。解析の結果、TLR3リガンドであるPoly(I:C)が破骨細胞の分化を抑制することによって、骨量が増加することが、細胞および分子レベルで明らかとなった。このことから、H24年度はおおむね順調に進展したといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
1)骨粗鬆症モデル:マウスの卵巣を摘出し骨粗鬆症を誘発する。同時に各種TLRリガンドを投与して骨粗鬆症に与える影響を解析する。2)癌の骨転移モデル:骨転移能をもつマウスB16F10メラノーマ細胞株またはヒト口腔扁平上皮癌細胞株BHYをマウスの左心室に注入し骨転移を誘導する。3)炎症性骨破壊モデル:マウスの頭蓋骨の骨膜付近に各TLRリガンドを注入し、炎症性骨破壊を誘発させ、骨に与える影響を組織学的に解析する。4)関節リウマチモデル:II型コラーゲン抗体とLPSをマウスに投与し、関節リウマチを発症させ、病態を解析する。4)細胞レベルのメカニズム解析:上記骨疾患モデルマウスの組織切片を作製し、骨芽細胞、破骨細胞、軟骨細胞、免疫細胞の変化を解析する。それぞれの病態を反映した細胞培養系を用いて、TLRがこれらの細胞の分化、機能、生存に与える影響を解析する。5)分子レベルのメカニズム解析:上記骨疾患モデルの罹患部よりRNAを抽出し、DNAマイクロアレイやプロテインチップを用いてTLRリガンド投与前と後の病態における遺伝子発現レベルの変化を網羅的に解析する。これらの解析結果に基づいて、IRFsなどTLRシグナルに関与する転写因子の役割をRNAiやエピジェネティクス解析を用いて解明する。さらに、TLR3などの遺伝子欠損マウスや、可溶型TLRトランスジェニックマウスを用いて、骨疾患の発症機序を解明する。6)Poly(I:C)の作用:TLR3リガンドPoly(I:C)や、他のTLRリガンドが上記の骨疾患治療に効果があるか否か、各病態モデルマウスに投与して影響を解析する。
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