2012 Fiscal Year Annual Research Report
ヒバクシャ・コミュニティの国際的連携構築に向けた比較研究
Project/Area Number |
23401028
|
Section | 海外学術 |
Research Institution | Hiroshima City University |
Principal Investigator |
ロバート ジェイコブズ 広島市立大学, 付置研究所, 准教授 (60423969)
|
Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | ヒバクシャ研究 / トラウマ研究 / 核実験 / 核戦争 / 植民地主義 / ポスト植民地主義 |
Research Abstract |
平成24年度は主に次の活動を行った。1)アルジェリア及びカザフスタンにおいて、文献資料の収集やオーラル・ヒストリー聞き取り調査を実施し、現地の指導者やヒバク3世との繋がりを得た。2)英国マンチェスター大学のIn Place of Warプロジェクト及び豪州のNuclear Futuresプロジェクトなど学術的プロジェクトとの協力関係を確立した。3)予備調査の内容は、国際的学会での発表やジャーナルへの寄稿、また国内外の複数のメディアから多くのインタビューを受けるなどの形で発信した。4)広島と長崎のヒバクシャに関する短編ドキュメンタリー・フィルムを制作し、豪州で開催された行事で上映した。 核実験による被害者を筆頭とする多くのヒバクシャ・コミュニティは、同じような経験や苦難を抱えているが、そのほとんどが完全に孤立しており、ヒバクシャ医療の問題や、ポスト植民地主義、また他のコミュニティに関する情報が遮断された状態にある。これらのコミュニティ間の国際的連携を構築することにより、ヒバクシャ自身のみならず、ヒバク2世、3世の医療問題に関する情報を共有し、団結して補償の問題に取り組むことが可能となる。また核兵器廃絶に向けた運動や、核実験などで汚染された土地の修復・補償問題に関しても同様により大きな成果が期待される。 当研究で実施する研修セミナーでは、疲弊したヒバクシャ・コミュニティの若い世代が必要とする情報を提供し、国際的連携を構築する道を提示する。また学術的にも当研究はヒバクの影響の歴史学的・社会学的理解を深めるため、福島第一原子力発電所の例など、新たに放射能被害を被るコミュニティへの道標となる。核実験の歴史を従来の軍事的枠組みによる理解からポスト植民地主義の枠組みによる理解へシフトさせることにより、健康被害と地域社会の被害の両方を被る人々の大幅な権利拡大に寄与している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画を順調に遂行し、予定したヒバクシャ・コミュニティや対象者集団の調査、オーラル・ヒストリー調査や核問題に関連する文化的遺物の収集、及びウェブサイトに必要な情報の収集を実施した。アルジェリアの核実験によるヒバクシャとの連携を構築し、カザフスタンではヒバクシャ3世への研修セミナー開催に向けた計画を現地の指導者と練った。また、福島の放射能被害者への直接的な聞き取り調査にも着手した。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度である本年度は、研究成果を研究者のみならず一般の人々へ公表するために、出版に向けた作業に取り掛かる。また研究を促進するために、ヒバクシャ・コミュニティで収集した資料を載せるウェブサイトの構築を始める。水爆実験による被災60周年であるマーシャル諸島においては、4つのヒバクシャ・コミュニティにおいて若い世代の指導者へ研修セミナーを開催する。英国、及びポルトガルの学会でも研究報告を行う。フランス領ポリネシアにおいては放射能被害についてコミュニティの人々を啓発し、他のヒバクシャ・コミュニティとの連携の道を提示する。また、論文審査のある専門誌やエディンバラ大学出版会から出版される本へ論文を掲載する。
|
Research Products
(8 results)