2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23401031
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Section | 海外学術 |
Research Field |
Archaeology
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Research Institution | Showa Women's University |
Principal Investigator |
山形 眞理子 昭和女子大学, 国際文化研究所, 研究員 (90409582)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鐘ヶ江 賢二 鹿児島国際大学, 博物館実習施設, 助手 (00389595)
吉開 将人 北海道大学, 文学研究科, 准教授 (80272491)
俵 寛司 サイバー大学, 国際文化学部, 准教授 (80463925)
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Project Period (FY) |
2011-11-18 – 2016-03-31
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Keywords | 考古学 / 国際情報交換 / ベトナム |
Research Abstract |
平成24年度は2013年2月21日から3月10日にかけて、ベトナム中部・クァンナム省ズイスエン県チャーキュウTra Kieu遺跡の東城壁にて発掘調査を実施した。ベトナム南部社会科学院(旧ベトナム南部持続可能発展院)、クァンナム省博物館との国際共同調査である。発掘調査の総責任者はブイ・チー・ホアン博士(海外研究協力者、南部社会科学院副院長)、ベトナム側の現場担当者はグエン・キム・ズン博士(同じく海外研究協力者、ベトナム考古学院)と南部社会科学院の若手考古学者3名である。日本側責任者は研究代表者・山形で、研究分担者・俵と鐘ヶ江に加え、研究協力者として日本人大学院生3名も参加した。 城壁を横断する発掘を実施した目的は、チャンパ王都を取り囲む城壁の構造と築造年代を解明することである。それが本研究課題の目的である紀元後4世紀から7世紀という、考古学的に空白の時代の林邑に光をあてることになると期待した。発掘総面積は約60㎡で、レンガを積み重ねた壁が二列と、両者の中間と外側に堆積する地業層を検出することができた。多くのレンガ破片と瓦破片が出土し、完形に近いクンディ(水注瓶)と漢系印紋陶も得られている。瓦破片は炭化物の集中を伴っており、城壁上に存在した木造建築が焼失し倒壊した可能性が示唆された。 林邑に関する文献調査を実施している分担者・吉開は、2012年6月に広西壮族自治区博物館、同民族博物館で銅鼓に関する調査を行い、中越国境地域で馬援銅柱伝承地についての実地調査を行った。さらに、本研究課題に関連する成果をふたつの国際学会で発表した。2012年6月にパリで行われた国際学会「チャンパ史の新研究」(山形とグエン・キム・ズン、ブイ・チー・ホアンの共著ペイパー)と、同9月にダブリンで開催された東南アジア考古学者ヨーロッパ協会第14回国際会議(俵と山形の共著ペイパー)である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の主要な目的であったチャーキュウ遺跡城壁の発掘調査を実現することができた。発掘調査の準備、実施、撤収に至るまで、ベトナム側共同研究機関(南部社会科学院、クァンナム省博物館)と地元ズイスエン県文化スポーツ観光室の助力を得て、無事かつ順調に進めることができた。ただし城壁の築造過程について現場で討論しながら慎重に掘り進めたこと、乾季に入っていた発掘調査期間中に思いがけず雨が降り、野外での作業を諦めざるを得なかった日があったこと、さらには発掘最後の数日間に、火事で倒壊した建物に由来するかもしれない瓦の集積が出土したことなどが影響し、地山と確認されるレベルまで掘り下げて発掘を終了することはできなかった。この点についてはベトナム側も日本側も納得しており、次年度に補足的な発掘調査を継続することで意見が一致している。ベトナム側の主導のもと、検出された遺構に砂をかぶせて養生し、次の調査に備えることとした。 中国・広西壮族自治区での文献調査も予定通りに実施された。二度の国際学会で研究成果を発表することにより、我々のチームによって林邑の考古学・歴史学の調査が進展していることを国際学界にアピールすることができた。 以上のように、研究の目的はおおむね順調に達成されつつあると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は今後もベトナム現地調査を中心として推進される。平成24年度に引き続き、平成25年度にはチャーキュウ遺跡東城壁の補足的な発掘調査と、それと並行してズイスエン県立サーフィン・チャンパ博物館において出土遺物の整理作業と初歩的分析を実施する。この計画についてはベトナム側共同研究機関(南部社会科学院、クァンナム省博物館)と地元文化スポーツ観光室の合意を得ている。現地で作成した図面のトレースなど、次年度以降は日本国内で実施する作業の量も増加する。 現時点で研究計画の変更あるいは研究を遂行する上での問題点はない。ただし、地元クァンナム省とズイスエン県から発掘地点の保存と活用(公開)の要望が出された。ベトナム側カウンターパートである南部社会科学院の考えでは、地元の要望を尊重する場合、今後の発掘方針に若干の影響が及ぶ可能性がある。遺構の野外展示を可能とするためには多くの課題に取り組まなければならず、本研究課題がどのように協力できるのか、現時点では予測が難しい面もある。しかし出土した遺構の活用は、本研究課題にとって非常に有意義な方向性である。今後は今まで以上に、地元行政機関や住民との話し合いを密に行い、遺跡の持続的な活用を念頭においた調査を展開する必要がある。
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Research Products
(8 results)