2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23401031
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Section | 海外学術 |
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
山形 眞理子 金沢大学, 国際文化資源学研究センター, 教授 (90409582)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鐘ヶ江 賢二 鹿児島国際大学, 博物館実習施設, 助手 (00389595)
吉開 将人 北海道大学, 文学研究科, 准教授 (80272491)
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Project Period (FY) |
2011-11-18 – 2016-03-31
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Keywords | 考古学 / 国際研究者交流 / ベトナム |
Research Abstract |
平成25年度は8月8日から同21日まで二週間、ベトナム中部クァンナム省ズイスエン県チャーキュウTra Kieu遺跡において発掘調査を実施することができた。平成24年度の第一次発掘に続く第二次発掘である。ベトナム南部社会科学院、クァンナム省博物館との共同調査で、発掘調査の総責任者はブイ・チー・ホアン(海外研究協力者、南部社会科学院副院長)、ベトナム側現場担当者はグエン・キム・ズン(海外研究協力者、ベトナム考古学院)と若手考古学者ダン・ゴック・キン(南部社会科学院)である。日本側責任者は研究代表者・山形で、研究分担者・鐘ヶ江賢二と連携研究者・俵寛司に加え、日本と韓国の大学院生6名が参加した。発掘調査地点は第一次調査と同じく東城壁北端部で、第一次の発掘面積60㎡に加えて新たに40㎡を発掘し、総面積は100㎡となった。目的は林邑王都とされるチャーキュウ城の城壁築造年代と構造を明らかにすることである。第一次調査で検出された二列のレンガ壁を追いかける形で発掘区を拡張し、レンガ壁とその中間の盛り土層が城壁の芯となる構造であること、少なくとも二度の増築があったことを確かめた。トレンチ内の一部で地山に到達することもできた。放射性炭素測定年代によると、城壁築造は後4世紀前半に始まった可能性が高い。 なお発掘調査中に山形が地元の中学校に招かれ、発掘調査の成果と意義、郷土の考古学に関するレクチャーを現地語でおこなった。また、2014年1月にカンボジアで開催された国際学会「インド太平洋先史学協会国際会議」において、ブイ・チー・ホアンほか三名と共著で発掘調査の概要を発表した。さらに、今回の城壁調査に先立って実施していた城内複数地点の発掘について英文報告書を刊行することができた。それによって、進行中の城壁調査の成果と城内の成果を比較し、チャーキュウ城全体の建設の経緯を論じることが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度調査の主眼であった発掘調査を無事遂行することができた。昨年度と併せて二度の発掘によって、所期の目的をおおむね達成することができた。すなわち城壁の構造と年代を知る手懸かりを得ることができ、一部であるが地山まで掘り下げることができた。研究分担者・鐘ヶ江による胎土分析用サンプルの採取も順調に行なわれた。一方、研究分担者・吉開将人は家族の急逝と介護の問題から海外調査を断念した。しかし国内で林邑関連史料の集成と、華南から発信される漢から六朝期にかかわる考古学情報の収集を行なった。さらに、山形は国際学会においてベトナム人研究協力者と共著で発掘調査の概要を発表し、国内外の研究者に向けて成果を発信することができた。以上のように研究はおおむね順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は発掘調査で得られた図面や遺物の整理作業と分析を集中的に行なう。整理作業はおもに現地の県立博物館で実施するが、地元の中高生や希望者に整理作業に参加してもらうことによって、住民との交流を深める。研究協力者・鐘ヶ江は鹿児島国際大学の設備を利用して、出土資料の胎土分析を進める。整理作業と分析は、次年度に予定している発掘調査報告書の作成に向けた必須の作業である。 なお第一次の発掘調査中にクァンナム省上層部の視察があり、出土した遺構とくにレンガ壁の保存を提案された。将来的に遺跡博物館として公開したいという意向である。その意向を受け、ベトナム側は第二次発掘ではレンガ壁をなるべく広く露出させるような発掘を希望した。それは良い結果につながったが、発掘面積が予想以上に広くなったことも確かであり、それだけ整理作業の負担が増えた。さらに、ベトナムにおける物価の上昇も予想を上回っており、今後の計画を縮小する必要も生じている。限られた条件のもとで最大の成果をあげるべく努力するつもりである。
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Research Products
(6 results)