2012 Fiscal Year Annual Research Report
海外所蔵北朝鮮関連資料の収集・翻訳・刊行調査研究1948~1991
Project/Area Number |
23402021
|
Section | 海外学術 |
Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
森 善宣 佐賀大学, 文化教育学部, 准教授 (80270156)
|
Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 金日成 / 朝鮮労働党 / 8月宗派事件 / 在日朝鮮人帰還事業 / 中国人民志願軍 / 核開発 / 経済復興 / 4.19政変 |
Research Abstract |
本年度は北京大学韓半島研究中心(朝鮮半島研究センター、以下「センター」と略記)から「毛沢東同志、毎朝閲覧の『内部参考』」を購入、前年度に購入済みのロシア資料と合わせて、本研究課題である北朝鮮関連海外所蔵資料として調査、分析、整理を進めた。 この過程で北京からセンター長で共同研究者の金東吉氏が5月、7月、1月に来日、本人が7月と12月に北京とソウルにそれぞれ飛んで、共同研究を推進した。12月のソウル訪問では12月19日に投開票のあった韓国大統領選挙に関し、共同して現地で調査した。 この結果、本研究の対象である北朝鮮資料の約55%を入手したので、これを調査して10~20個のテーマ別に資料群として整理、各資料群に解題と参考資料(関連の論文、論評など)を付けて編集する方針を立て、この方針の下で翻訳作業を開始した。最終年度に当たる2013年度にも新資料を入手する予定であるが、一旦は本年度までの資料を中心として、新資料は追加的に編纂する形で作業することとした。 具体的には現在、次のようなテーマで資料群を整理中である。①朝鮮労働党内の粛清過程(1953-1958年)、②朝鮮戦争後の経済復興(1953-1955年)、③第1次5ヵ年経済計画(1956-1960年)、④8月宗派事件(1956年)、⑤中国人民志願軍の撤収(1958年)、⑥在日朝鮮人帰還事業(1959年)、⑦核開発開始の経緯(1960年)、⑧4.19政変と北朝鮮の対応(1959-1961年)等で、ここで字数に限りがあるので以下は割愛する。 このように作業を推進しながら、例えば①、⑤、⑥に関しては、先行して核心的な要点を書籍や論文にまとめ、刊行する予定である。これと共に、2013年度前半から韓国慶尚大学校の協力を得て翻訳作業が実行段階に入り、新資料と合わせて『北朝鮮関連重要外交資料集』(仮題)が形をなしつつある段階にあると言える。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最終年度を残した現段階における達成度は、約55%である。前述のように、資料の収集度も同程度であり、これに付随する作業の進展度合いも同様と言える。3年の期限で2年が終了したのに、達成度が3分の2に満たない理由は、次のとおりである。 ひとつは、資料そのものが膨大なため、未だに全体を調査するに至らず、未見の部分を残しているのみならず、共同研究者で資料提供者である金東吉氏が来年度さらにロシアで発掘した新資料を持参するという。つまり、未知の資料が残っているのである。もう一つは、当初の予定では作業を北京大学翻訳家協会とタイ・アップして進める予定だったが、同協会で日本語への翻訳に当たるスタッフの実力が乏しく、実際には使い物にならなかった事情がある。すなわち、中国人スタッフは日本語の実力が極めて乏しく、少数イル日本人スタッフはロシア語ないしは中国語の実力が乏しいという具合である。 現在は、手元にある資料を本人がテーマ別に資料群へ区分、整理する一方、この資料の翻訳に当たるスタッフを求めた結果、やっと適任者が発見できた段階である。具体的には、韓国慶尚大学校副教授の朴鍾哲氏から助力を得て、彼の下にいる朝鮮族院生たちがこの作業に当たることが充分に可能だということが判明した。 このように、翻訳作業に渡す整理された資料群は、程なく出来上がり、あとは金東吉氏と協議して資料群から実際に翻訳する資料を精選する段階を迎える。この精選の作業は、来年度に入手する新資料の調査、整理の結果次第では新しい資料群を形成する可能性もある。したがって、その可能性も勘案すると、現在の達成度は約55%だと言うべきであるが、決して作業が沈滞しているわけではない。 2013年度は本年度の達成成果を踏まえて、翻訳された資料群に参考資料を付けて編集、翌2014年度に科研費の研究成果公開促進(出版助成)を申請することになると思われる。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度までの達成経過を踏まえて、今後の研究は本研究課題の計画に従って、テーマ別に整理された資料群の翻訳、編集、そして出版へと進むことになる。まず、テーマ別の整理に関しては、新資料の調査を含めて来年度の前半期には終了する予定である。 残念ながら、本研究課題が想定していた翻訳作業が、北京大学翻訳家協会所属スタッフの能力不足から中国の廉価な賃金では出来ないことが判明し、新たに韓国慶尚大学校に所属する朝鮮族院生に依頼することになった。この翻訳作業は、2013年度後半期に開始されて、約1年間かけて推進されることになる。 そこで、来年度に支給予定の補助金の中から翻訳費を捻出する代わり、編集後の出版費用を科研費研究成果公開促進費(出版助成費)を申請することにする。そして、その申請が認可されるという前提で、2015年度に社会評論社から本研究課題の最終目標である北朝鮮関連の外交資料集を刊行する運びとなろう。 これらの過程で、先行的な研究成果の公開として、いくつかのテーマについては論文を 執筆、日本内外の学術雑誌に公刊する予定である。既に研究代表者は2本の論文に着手しているが、逆説的ながら資料が発掘、調査されればされる程、新しい史実が明らかになり、論文に修正を加える必要が出ているのが実情である。 したがって、今後の研究の推進方策としては、一方で資料集の出版を目指して作業を鋭意おこないながら、他方では先行的な論文の修正から完成へと至るように努力することにより、その史実の解明を資料集の内容にも反映するよう相互補完的な連携作戦をとる。つまり、研究代表者ひとりでは膨大な作業をこなすのは難しいため、共同研究者の金東吉氏や慶尚大学校の朴鍾哲氏などの協力を得ながら、優先順位に従い作業を推進するよりも、むしろ総合的な連関を勘案して最終的に両方の目的が達成できる出口戦略方策で研究を推進していく。
|
Research Products
(4 results)