2011 Fiscal Year Annual Research Report
多文化社会の排除と包摂の論理:ハワイにおける文化創生をめぐる民族間交渉と戦略
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23402045
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Section | 海外学術 |
Research Institution | Komazawa University |
Principal Investigator |
白水 繁彦 駒澤大学, ダローバル・メディア・スタディーズ学部, 教授 (80095942)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中野 克彦 立命館大学, 国際関係学部, 講師 (80449529)
城田 愛 大分県立芸術文化短期大学, 国際文化学科, 専任講師 (80425389)
野入 直美 琉球大学, 法文学部, 准教授 (90264465)
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Keywords | 文化創生 / 民族間関係 / エスニック・マイノリティ / 芸術療法 / 民族芸能 / ハイブリディティ / 沖縄系 / 変容エージェント |
Research Abstract |
白水は「変容エージェントと文化創生・民族間交渉」研究のために2011年9月と2012年3月にハワイ州オアフ島、マウイ島においてフィールドワークを実施。オキナワン・フェスティバルや宜野湾市人会100周年記念新年会における参与観察をはじめ、継続中の沖縄系や日系社会のエスニック・リーダーに対する深層面接調査を実施。リーダーたちの活動をミクロ・マクロな視点から理解する手がかりを得た。中野は「中国系民族祭を通じた民族間関係」の研究のために、2012年1月にホノルルを訪問し、中華総商会主催の水仙祭(この年100周年)の参与観察を行なった。さらに総商会のキーパーソンへのインタビューを行い、中国系とフィリピン系の民族間関係と民族文化活動に関する貴重な情報を得た。城田は「ハワイと沖縄の芸術療法にみる多文化共生」研究のために、2011年8月~9月にはオアフで人類学者やフラの指導者たちへハワイの芸術療法に関するインタビュー等を実施。10月には沖縄で第5回世界のウチナーンチュ大会や「世界エイサー大会2011」参与観察やインタビューを実施し、自閉症児教育などについて貴重な知見を得た。野入は、2011年10月に沖縄県で開催された第5回世界のウチナーンチュ大会で参加者を対象とするアンケート調査を実施し、海外の沖縄県系人の移民世代、階層、アイデンティティに関するマクロデータを得た。また、2012年2月~3月初旬にオアフ島とマウイ島で追加の聞き取りと資料収集。その結果、ハワイにおけるミックス・ルーツの人びとと帰米二世のアイデンティティやネットワークに関する異同と共通点を見出した。研究協力者の李は「コリア系移民の集団化過程と民族間関係」研究のため、2012年2月にハワイ州ホノルル市およびワヒアワ市でフィールドワークを実施。集団化過程の知見ならびに、文化創生をめぐるコリア系移民の歴史的側面やハワイの「多文化共生社会」に対するコリア系移民の見解を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
白水:沖縄系、日系の変容エージェントに対する深層面接を順調に行うことができているため。 中野:中国系及びフィリピン系の民族文化活動に関する現地調査と資料収集を当初の予定通り実施し、キーパーソンへのインタビューを実現できたため。城田:ハワイと沖縄における「芸術療法」に関して、調査対象のキーパーソンたちにインタビューを実施し、有意義かつ今後の調査にも有効な情報・知識が入手できたため。野入:オアフ島、マウイ島におけるインフォーマントとのラポールを継続・進化させ、次なるインタビューの課題を析出することができているため。李:現地調査において多くの協力を得、インタビュー調査を順調に実施することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
白水:親密な関係を構築した変容エージェントとの深層面接をさらに継続すること。また、これまでの深層面接で得たミクロな情報・知見をハワイの社会構造やハワイをめぐる地域間関係などのマクロな状況に結び付け、理論化への足がかりを得ること。中野:中国系とフィリピン系、さらに他の民族集団との民族間関係が、ハワイにおける新たなエスニック文化の創生にどのようにかかわっているかを、引き続きフィールドワークを通じて明らかにする。今後は歴史的な一次資料の体系的収集とともに、キーパーソンへの聞き取り調査をさらに拡充することで、データの一層の充実化をはかる。城田:今後、さらに、ハワイと沖縄において、民族舞踊(フラやエイサー)が、芸術療法として、実際にどのように用いられているのか、できるだけ多くの具体的事例を調査していく。あわせて、日本と世界における芸術療法の動向についても調べ、ハワイと沖縄との比較をおこなっていく。 野入:エスニック・マイノリティグループの中においても周縁化されてきた帰米2世、アメラジアンのアイデンティティとネットワークに光をあてることで、"ローカル"とのせめぎ合いの中から新たな文化が創成するメカニズムを解明し、理論化していくことが課題である。李:現地調査を行った結果、一部の歴史的史料が紛失している事実が判明した。そのため次年度の調査においてはインタビュー調査の対象を広げ、不足分を補う予定である。
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Research Products
(11 results)