2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23403006
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Section | 海外学術 |
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
杉山 慎 北海道大学, 低温科学研究所, 講師 (20421951)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | カービング氷河 / パタゴニア氷原 / 氷河流動 / ウプサラ氷河 / ペリートモレノ氷河 / アルゼンチン / 人工衛星データ / 国際研究者交流 |
Research Abstract |
H24年度は、人工衛星データの解析、およびカービング氷河における野外調査を実施した。 (1) 人工衛星データ解析 Landsat画像を用いて、南パタゴニア氷原の主要なカービング氷河全てに関して、1984年から2011年にかけての末端位置変動を解析した。また同期間のLandsat画像に画像相関法を適用し、主要なカービング氷河全ての流動速度分布とその変動を明らかにした。以上の解析結果は、南パタゴニア氷原における1980年代以降の氷河変動を初めて明らかにするとともに、同地域で初めての氷河流動マップを示したものである。また、急激に後退を示す氷河において顕著な流動加速が測定され、カービング氷河の流動と変動との間に強い関係性が示された。一部の氷河に関しては、マイクロ波画像を利用した高時間分解能流動解析を行い、流速の季節変動、変動のタイミングなどが明らかとなった。さらに、同一地域にありながら異なった変動を示すペリートモレノ氷河とアメギノ氷河に関して、ALOS可視画像を用いた詳細な解析を行い、両氷河の2000年以降の末端変動および氷厚変化を測定した。その結果は、氷河底面地形が氷河変動に与える影響を示唆するものであった。 (2) 野外調査 2012年12月6日から2013年1月9日にかけて、南パタゴニア氷原を代表する3つの大型カービング氷河(ペリートモレノ、ウプサラ、ヴィエドマ氷河)にて観測を行った。各氷河において流動速度を連続測定し、氷河によって異なる短期流動変化の様相が明らかとなった。また、それぞれの氷河が流入する氷河湖において湖水温と流速の測定を行い、淡水にカービングする氷河末端付近の特徴と考えられる特殊な温度構造が得られた。 以上の成果は国際学会、国内学会で発表するとともに、国際誌に論文を投稿中および投稿準備中である。さらに、ウプサラ氷河の変動に関する前年度の成果を国際誌上に論文出版した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H24年度は当初の計画に沿って、人工衛星データの解析と、野外観測およびその準備作業を実施した。 まず人工衛星データの解析に関しては、前年度のウプサラ氷河における解析を発展させて、南パタゴニア氷原全域における流動速度と末端変動のマッピングに成功した。さらにマイクロ波画像を活用した流動解析を複数の氷河に適用したことで、非常に短い時間分解能で流動の変化が明らかになった。これらは世界に先駆けた成果であり、予想を上回る進展と考えている。また従来から観測を続けているペリートモレノ氷河に関しても、アメギノ氷河との比較解析によって新しい知見が得られ、ほぼ予定通りの成果を上げることができた。これらの成果は国内外の学会で発表済であり、一部の内容は国際誌に論文を投稿中、および投稿準備中となっている。 次に野外観測に関しては、各種の測定装置、特に湖での測定システムを新しく構築し、予定通り約5週間の野外観測を実施した。大規模な3つのカービング氷河ついて、その流動連続測定、末端湖における観測を実現した意義は大きい。特に、変動が激しいウプサラ氷河の中央部で貴重なGPSデータを取得し、ヴィエドマ氷河の末端湖で特徴的な温度構造を確認するなど、当初掲げた目標を達成することができた。さらに、ウプサラ氷河中央部に比較的平坦な場所を発見し、H25年度に予定している熱水掘削候補地として選定した。 数値モデルの開発に関しては、衛星および野外観測データに基づいて、ペリートモレノ氷河の2次元モデルに着手した。概ね予定通りの進捗ではあるが、今後は数値モデルの精緻化と数値実験の実施に力を入れる必要がある。 以上の状況を鑑みて、本研究課題はおおむね順調に進展中と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
H25年度は人工衛星データの解析を推し進めると共に、ウプサラ氷河での熱水掘削を含む野外観測を実施する。その成果を学会にて公表し、前年までの研究成果を国際誌に論文として出版する。また、ホームページ、一般講演などを通じて、社会への成果発信を行う。 (1) 人工衛星データの解析 H24年度までに南パタゴニア氷原全域の解析を終えたことを受けて、H25年度はいくつかの氷河に着目して詳細な変動、流動解析を行う。すでにウプサラ氷河において明らかになったように、末端変動、流動加速、氷厚減少の3つの現象が連鎖する点が、カービング氷河の急激な変動の特徴である。そのメカニズムを明らかにするため、観測を行う氷河、変動の激しい氷河について集中的な解析を実施する。またマイクロ波画像を使用することにより、画像取得時の天候に左右されない高時間分解能の測定が可能となる。この点を活かして、急激な変動のタイミング、各現象の因果関係の解明を目指す。 (2) 野外観測 H25年度はウプサラ氷河での熱水掘削を実施する。前年の観測で掘削に適した場所を選定済みであり、掘削の実現に向けて現地カウンターパートとの情報交換を続けているところである。掘削機材を日本から現地に輸送するため、余裕をもった機材準備と輸送のスケジュールが必要となる。現地でのヘリコプター輸送の手配も含めて、カウンターパートと強力して準備を進める。掘削に成功した場合は、底面水圧と流動速度を連続的に測定し、近年激しく変動しているウプサラ氷河の流動メカニズム解明の手がかりとする。またペリートモレノ氷河では、氷河表面標高の精密な測定を行い、その年々変動を人工衛星データと比較しながら議論する。さらに、氷河末端湖での観測手法を洗練させて、湖水温度構造に関するデータを蓄積する。
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Research Products
(14 results)
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[Presentation] Rapid retreat, acceleration, and thinning of Glaciar Upsala in the Southern Patagonia Icefield, initiated in 20082012
Author(s)
Sakakibara, D., Sugiyama, S., Sawagaki, T., Marinsek, S. and Skvarca, P.
Organizer
IGS(国際雪氷学会) International Symposium on Glaciers and Ice sheets in a Warming Climate
Place of Presentation
University of Alaska, Fairbanks (USA)
Year and Date
20120625-20120629
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