2013 Fiscal Year Annual Research Report
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23403006
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
杉山 慎 北海道大学, 低温科学研究所, 准教授 (20421951)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | カービング氷河 / パタゴニア氷原 / 氷河流動 / ウプサラ氷河 / ペリートモレノ氷河 / アルゼンチン / 人工衛星データ / 国際研究者交流 |
Outline of Annual Research Achievements |
2013年度は、人工衛星データの解析を進めるとともに、南パタゴニア氷原においてカービング氷河と氷河前縁湖での観測を実施した。 (1) 人工衛星データ解析:前年度までにLandsat画像を使って測定した、南パタゴニア氷原におけるカービング氷河の末端変動と流動速度マップを解析して、末端変動と流動速度変化の関係を詳しく調べた。これまでの解析で急速な後退と加速が見いだされたウプサラ氷河の他に、ホルヘ・モン氷河およびHPS12氷河でも、同じような末端後退と流動加速が見いだされた。またペリート・モレノ氷河とアメギノ氷河の表面質量収支とカービング量の定量化を進め、両氷河が異なった変動を示す要因を明らかにした。 (2) 野外調査:2013年12月から2014年1月にかけて、ペリート・モレノ氷河、ウプサラ氷河、およびヴィエドマ氷河が流入する湖において観測を実施した。その結果、湖の水温・濁度構造が、カービング氷河からの融解水流出と湖底地形にコントロールされていることが明らかとなった。また湖底地形を詳細に測定した結果、湖底地形がカービング氷河の変動に大きな影響を与えていることが示唆された。さらにペリート・モレノ氷河では流動速度を連続測定し、短期流動変化と気温の相関関係を得た。 2014年3月に北大低温研に研究協力者が集まり、これまでの成果を報告、議論するワークショップを開催した。また上記の研究成果を雪氷学会、極域科学シンポジウムなどの国内学会で発表するとともに、国際誌への投稿論文を準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2013年度は当初の計画に沿って、人工衛星データの解析および野外観測を実施した。人工衛星データの解析結果を詳しく検討し、また野外観測によって得られた湖底地形を合わせて解析することにより、南パタゴニア氷原におけるカービング氷河の急激な後退メカニズムに重要な知見を得た。これらの成果は、当初掲げた本プロジェクトの主要目的である「パタゴニアにおけるカービング氷河の過去10~20年間にわたる氷河変動と流動変化」および「氷河後退と流動加速のフィードバック仮説の検証」の解決を推し進めるものであり、計画が順調に進展していることを示すものである。 2013 年度の野外調査では、当初ウプサラ氷河での熱水掘削を予定していた。しかしながら掘削機材の輸送に使用するアルゼンチン国境警備隊のヘリコプターが運航不可能となり、掘削活動を翌2014年度に延期するとともに、掘削地を南極半島のカービング氷河に変更した。この変更を受けて2013年度の野外調査では、カービング氷河が流入する湖の観測に注力し、湖水温度と濁度の構造、湖底地形に関して従来得られていないユニークで重要な観測データを得た。氷河と湖との相互作用は本プロジェクトを進める上で明らかになった重要なプロセスであり、当初の計画を超えた新しい研究成果につながるものである。 研究代表者と協力者によって学会発表が行われた他、南パタゴニア氷原全域に関する解析と、ペリート・モレノ氷河とアメギノ氷河を比較する解析に関して、それぞれ投稿論文の準備が進んでいる。以上の状況を鑑みて、本研究課題はおおむね順調に進展中と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
H26年度は、パタゴニア南氷原において本プロジェクト3度目の野外調査を実施する他、南極半島のカービング氷河において、前年から延期された熱水掘削を実施する。そして人工衛星データ解析と野外調査で得られた知見を統合し、研究目的である「カービング氷河の急激な後退に氷河流動が果たす役割」の解明を目指す。学会発表を経てまとまった研究成果について国際誌に論文を発表するとともに、新しい成果を国内外の学会で発表する。 (1) パタゴニア氷原での観測:ペリート・モレノ氷河とウプサラ氷河において、これまでに実施経験のない冬季の観測を実施する。氷河前縁湖では温度・濁度構造の季節変化の解明、および湖底地形データを精緻化することを目的とした観測を実施する。また冬季の氷河流動変化を測定する。 (2) 南極半島での観測:カービング氷河の底面状態が流動変化と変動に果たす役割を明らかにするため、南極半島リビングストン島に位置するジョンソン氷河にて熱水掘削と各種の観測を行う。この観測はスペインの研究者と協力して、スペイン基地の支援を得て実施するものである。 (3) 研究成果の公表:南パタゴニア氷原におけるカービング氷河の変動と流動変化、およびペリート・モレノ氷河とアメギノ氷河の対照的な振る舞いについて、それぞれ国際誌に論文を投稿する。また氷河前の湖における水温・濁度構造について、国際学会での発表を行う。年度内には研究プロジェクトの総括として、日本の研究者がパタゴニアでの氷河研究を開始して30年となることを記念する研究集会を開催する。その他、市民講座での講演やHPなどを通じてアウトリーチにも力を入れる。
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Remarks |
2013年9月20日に以下の発表が雪氷研究大会学生優秀発表賞を受賞。 「グリーンランド北西部におけるカービング氷河の末端変動と流動変化」榊原大貴、杉山慎(ポスター発表部門 優秀発表賞)および「南極・ラングホブデ氷河の末端位置・流動速度・表面標高の変化」福田武博, 杉山慎, 澤柿教伸 , 中村和樹(口頭発表部門 優秀発表賞)
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Research Products
(18 results)
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[Presentation] Mass loss of glaciers and ice caps in northwestern Greenland2013
Author(s)
Sugiyama, S., Tsutaki, S., Sakakibara, D., Sawagaki, T., Matsuno, S., Minowa, M., Maruyama, M., Saito, J, Matoba S., Yamaguchi, S.
Organizer
第4回極域科学シンポジウム
Place of Presentation
国立極地研究所(立川・東京)
Year and Date
2013-11-12 – 2013-11-15
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