2011 Fiscal Year Annual Research Report
平等院ガラスはどこから来たか-オンサイト蛍光X線分析による古代和ガラスの起源解明
Project/Area Number |
23404008
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Section | 海外学術 |
Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
中井 泉 東京理科大学, 理学部・応用化学科, 教授 (90155648)
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Keywords | 考古学 / 美術史 / 蛍光X線 / 非破壊分析 / 考古化学 / ガラス / オンサイト分析 / 東西交流 |
Research Abstract |
大型ガラス資料を大気中で非破壊で分析したり、複雑なモザイクガラスの特定の微小部を蛍光X線分析できる分光ヘッド部を新規に開発し完成した。原理は、X線管球にポリキャピラリーを組み合わせることで、200マイクロメートルの微小領域にX線を照射できる。試料とはマイラー膜を隔てて分光ヘッド内は真空引きし、SDD検出器はMoxtek製ポリマー窓とし、NaやMgなどの軽元素を分析を実現した。電源とコントローラは従来装置を利用し、現場に新型と従来型と両方の分光ヘッドを持って行き、対象に応じて使いわけることができる。本装置を用いて、天理参考館および平山郁夫シルクロード美術館で大型ガラス容器やモザイクガラスの分析を行い、初期の目的を達成する性能を確認した。本成果は2011年10月のX線分析討論会で発表し、2012年6月にウイーンで開催されるX線分析の国際会議EXRSで口頭発表する予定である。 日本の古代ガラスの分析では、熊本県装飾古墳館、佐賀県鳥栖市役所、熊本市立博物館、茨城県ひたちなか市埋蔵文化センターで、熊本県、佐賀県、茨城県の古墳出土ガラスを分析し、九州と類似した組成のカリガラス、ソーダ石灰ガラス、アルミナソーダ石灰ガラスが茨城県の古墳から出土しており、古墳時代に九州から関東まで、広くガラスが流通している様子が推察された。国内美術館・博物館での西アジアのガラスの分析に加え、海外分析調査では、2011年12月にルクソール王家の谷の王墓から出土した新王国時代のガラス、2012年1月にインドのインダス文明期のファイアンス、同年3月にカンボジアのBC5-AD7世紀のガラスの分析を行った。本研究テーマと直接関係する和ガラスの起源としては、カンボジアで分析した資料の中にスズ酸鉛によって着色された黄色ガラスが認められ、これらのガラスの化学組成を日本のものと比較した結果、微量元素も含め類似していることが明らかとなり、日本のガラスの起源につながる大きな発見となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
装置開発において、初期の目標性能を達成する実用的世界最高性能の蛍光X線分析装置を開発できたことは大きな成果である。平等院では、我々の平等院ガラスの分析結果をもとに再現されたガラスの特別展「浄土の瑠璃」が10月~1月に開催され、社会に対しても本研究成果を発信できた。また、3月に行った海外調査で、今まで分析されたことがないカンボジアの古代ガラスを分析でき、日本の古代ガラスとの関連を示唆する画期的な成果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
日本の古墳時代に多数出土するアルミナソーダ石灰ガラスはインドが起源と考えられているが、実証されたことはない。2012年度の目標として、海のシルクロードの重要拠点である南インドのガラスの分析調査を実現できるかどうかが大きな課題である。また、分析例の少ない奈良から鎌倉時代の社寺のガラスの分析では、昨年は、東大寺法華堂の国宝「執金剛神立像」の眼のガラスの分析を実現できたので、東大寺の国宝「不空羂索観音立像の宝冠のガラス」の分析の実現を本年度の大きな目標としたい。確実に実現可能な調査として、日本国内では、分析例が少ない東北地方・関東地方の古墳出土ガラスの分析を行い、古代日本におけるガラスの流通を明らかにする計画である。
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Research Products
(28 results)
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[Presentation] シリア・カトナ王墓出土遺物のオンサイト分析2011
Author(s)
Tantrakarn Kriengkamol, 鈴木周作, 中村彩奈, 阿部善也, 中井 泉, James Lankton, Judit Zoeldfoeldi, Peter Pfalzner
Organizer
日本文化財科学会第28回大会
Place of Presentation
筑波大学
Year and Date
2011-06-11
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