Research Abstract |
本研究の目的は,近年インドシナ地域で急増している集中豪雨による斜面崩壊に対して,住民避難・道路通行止め等を目的とした土砂災害早期警戒体制を立案するための調査することである.現状の警戒体制は,過去の斜面崩壊時の降雨情報のみを用いて設定されているため,(1)雨量計の短時間集中豪雨に対する計測精度,および(2)降雨浸透の地盤条件による相違等の課題が挙げられる. 平成23年度の研究では,(1)については,先行研究サイト(ナコンナヨック)での雨量計測データ,および新たにプーケットに設置した雨量計での計測データを用いて分析を加えた.また,(2)については,先行研究サイトが透水性の低い中塑性粘性土地盤であるのに対して,プーケットサイトは透水性が高いまさ土であることから,地盤条件による雨水浸透特性の相違について検討した.得られた知見は,以下のように要約される. (1)については,従来の雨量計(転倒ます型雨量計)は,短時間集中豪雨の場合には,その計測原理から多少の降雨を捕捉できないが,累積降雨量としての誤差は10%以下であり実用的な面ではその計測精度に課題はないという知見が得られた.また,ナコンナヨックでは計測サイトの制約上,2種類の雨量計を150m程度離して設置しているが,短時間集中豪雨は局地的であるため,計測箇所の相違が降雨波形および累積降雨量に影響を及ぼすという知見が得られた. 次に,(2)については,斜面表面の不飽和領域での豪雨時の雨水浸透特性を表す原位置計測結果より算定した水分特性は,室内試験結果とは異なるという知見が得られた.すなわち,原位置条件は乾湿の繰り返しの影響を受けているため,室内試験で顕著である排水・吸水過程でのヒステリシスがほとんど認められないという結果が得られた.ただし,原位置での体積含水率を計測する土壌水分計の補正式に課題があることが判明したため,上記の知見は今後追加検討が必要である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,先行研究において懸念されていた従来の雨量計(転倒ます型雨量計)の短時間集中豪雨に対する計測精度に関して,2箇所の計測サイトでの雨量計測結果を蓄積し分析することで,累積降雨量としての誤差は10%以下であり実用的な面ではその計測精度に課題はないという重要な知見が得られた.また,短時間集中豪雨は局地的であるため,計測箇所の相違が降雨波形および累積降雨量に影響を及ぼすという結果が得られたことは,今後の土砂災害早期警戒体制を立案する上で,雨量計の配置計画に反映させるべき重要な知見であると位置づけられる.また,原位置での斜面表面の不飽和領域での豪雨時の雨水浸透特性が室内試験結果と異なるという知見は,今後数値解析によるシミュレーションを実施する上で重要な知見が得られた.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究おいては,原位置での体積含水率を計測する土壌水分計の補正式に課題があることが判明した.このため,今後2箇所の計測サイトより原位置サンプリングを実施し,室内試験結果とのキャリブレーションを実施し,体積含水率の精度に関する検証を実施する.その結果を踏まえて,「今後原位置計測結果に対して数値解析によるシミュレーションを実施することで,降雨浸透の地盤条件による相違を考慮した土砂災害早期警戒体制を立案するための調査を実施する予定である.
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