2012 Fiscal Year Annual Research Report
インド洋海域世界における港市の空間的連関・伝播・融合・転成に関する研究
Project/Area Number |
23404026
|
Section | 海外学術 |
Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
山根 周 関西学院大学, 総合政策学部, 准教授 (40285242)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
深見 奈緒子 早稲田大学, イスラーム地域研究機構, 上級研究員 (70424223)
布野 修司 滋賀県立大学, 環境科学部, 教授 (50107538)
|
Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | インド洋海域世界 / 港市 / ベンガル湾 / 南シナ海 / タイ / ミャンマー / インドネシア / マレーシア |
Research Abstract |
今年度は、ベンガル湾海域世界および南シナ海海域世界における歴史的港市の網羅的調査を行った。具体的にはバングラデシュのダッカ、チッタゴン、ミャンマーのヤンゴン、インドネシアのスラバヤ、スマラン、ドゥマック、クドゥス、ジャカルタ、バンダアチェ、メダン、パダン、パレンバン、マレーシアのジョージタウン、マラッカ、ジョホール・バル、コタ・バル、タイのソンクラー、パッターニー、バンコク、アユタヤ、中国の福州、泉州などである。在地の王室やスルタンのもと、華僑、インド人商人やムスリム商人、また西欧諸国勢力(ポルトガル、オランダ、イギリス)などによって行われた重層的な都市形成が、都市空間、建築様式、住空間の構成に与えた影響を明らかにすることを目的とした。 ミャンマーでは、ヤンゴンにおいて、タミル地方やグジャラート地方など多様な地域に出自を持つインド系の人々が、コミュニティー別に住み分けながら集住している実態が明らかになった。 インドネシアでは、研究協力者の鈴木英明氏(インド洋海域史)を交えた調査を行い、ジャワ島の港市において、15~6世紀以降イスラームを受容する中で、それまでのヒンドゥー的伝統を継承した建築様式が採用されたこと、アラブ系コミュニティーの居住地区が残っていること、またスマトラ島の港市において、特にタミル地方に出自を持つインド系の人々が数多く居住していることなどが明らかになった。 マレーシア、タイにおいては、華僑によるショップハウス群が全域にわたって多数見られる一方、インド系やペルシア系、ポルトガル系コミュニティーの居住区が存在すること、モスク建築の様式にインドやインドネシア等との共通点が見られることなどが明らかになった。 また東南アジアの港市のショップハウスの原型の一つと考えられる中国華南地方の住居について、騎楼、手巾寮などと呼ばれる住居タイプとその空間構成を明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、ベンガル湾海域世界のバングラデシュ、ミャンマーおよび南シナ海海域世界とベンガル湾海域世界にまたがるのマレー半島やスマトラ島の歴史的港市に関して、網羅的調査を実施した。一方で、申請時に今年度の調査を計画をしていたボルネオ島、マカッサル島における港市の調査を実施することはできなかった。 これは、インド洋海域世界の歴史的港市についてインドとの関連を主たる視点として調査分析を行う本研究において、研究を進める中で、ベンガル湾海域世界、およびベンガル湾海域世界と南シナ海海域世界が交差する地域の港市をより詳細に検討することが必要という認識にいたったことが大きな理由であり、対象港市について一部変動がありうるとした申請時の計画内容において、おおむね順調に進展していると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる2013年度は、これまでの研究の進展をふまえ、ボルネオ島、マカッサル島における港市(ポンティアナ、バンダル・スリ・ブガワン、サンボアンガ)における網羅的調査を行うとともに、ベンガル湾海域世界と南シナ海海域世界が交差し、インドや中国、イスラーム、マレーなどさまざまな要素が混在するマレー半島のジョージタウン(ペナン)、マラッカなどの港市において、インド系住民の居住する地区を主な対象として、都市構成および住居の空間構成に関する重点的調査を実施する。 申請時の計画でも記したように、ベンガル湾海域世界>南シナ海海域世界という優先順位や、南シナ海海域世界内でのマレー半島・インドシナ半島→ジャワ島→スラウェシ島→ボルネオ→フィリピンという優先順位に従い、インドネシアのマカッサル島やフィリピンについては、本研究期間内の対象からは外すこととし、対象港市を絞り込むこととする。
|
Research Products
(12 results)