2012 Fiscal Year Annual Research Report
ベトナムにおけるダイオキシン類暴露と性ホルモン・前立腺がんに関する疫学研究
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23406018
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Section | 海外学術 |
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
城戸 照彦 金沢大学, 保健学系, 教授 (20167373)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中川 秀昭 金沢医科大学, 医学部, 教授 (00097437)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 衛生 / 環境 / ダイオキシン / ステロイドホルモン / 前立腺特異抗原 / ベトナム / 枯葉剤 |
Research Abstract |
ベトナムにおける枯葉剤散布地区と非撒布地区の男性住民を対象に血清ダイオキシン、ステロイドホルモン、前立腺特異抗原(PSA)を比較検討するために、2010,11年に続き2012年も両地区で調査を実施した。 その結果、2年間で撒布地区で97名、非撒布地区で85名から血液を採取できた。参加者の年齢は55-80歳だった。血清中TCDDと総ダイオキシン類(PCDD/Fs)濃度の平均値とその範囲は散布地区では3.4 (0.7 - 24.0) pg/g lipid と29.9 (10.2- 106.4) pg TEQ/g lipid、非撒布地区で1.6 (0.4 - 4.7) pg/g lipid と10.2 (4.0 - 30.2) pg TEQ/gと散布地区男性の方が有意に高値を示した。特に、旧米軍基地で働いた経験のある2名が高値だった。一方、非撒布地区では、旧軍人(かつて南ベトナムの散布地区で戦闘作戦に参加)と非軍人、また、戦争中に直接枯葉剤の暴露を受けた人と受けていない人の間に、いずれも有意差はなかった。 PSAを両地区で比較した結果、散布地区0.93 ng/mL非撒布地区0.95 ng/mLと有意差は認められなかった。 ステロイドホルモンの比較では、テストステロンとエストラジオールは散布地区の方が有意に高く、反対にデヒドロエピアンドロステロン(DHEA)は散布地区の方が有意に低かった。特に、DHEAはダイオキシン類と有意な負の相関を示した。 以上の結果から、ベトナムの男性高齢者を対象としたダイオキシン類の健康影響に関する疫学調査の結果は、散布地区男性で血清中ダイオキシン類濃度が有意に高く、幾つかのステロイドホルモンで両地区間に有意差を認めた。特に、DHEAはダイオキシン類と負の相関を示し、ダイオキシン類がステロイドホルモンに影響を与えている可能性を示唆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
判定した根拠は以下の4点である。 第1に、当初予定した調査対象者の散布地区および非撒布地区各100名に対して、それに近い対象者から血液試料の採取が実現した。各測定項目の分析過程で、血液量の不足等で若干の試料の分析が困難であった点は残念だが、概ね想定内の事項と解釈できる。 第2には、既に、血清中ダイオキシン類とPSAの分析はすべて終了した。ステロイドホルモンについては、費用が不足したため、約半数ほどに測定数を減らしたうえで分析を終了した。 第3は、結果についてほぼ解析を終え、PSAの結果を日本衛生学会英文誌(Environmental Health & Preventive Medicine)に投稿し、受理された。現在on lineの段階だが、既に公表されている。 第4に、血清ダイオキシン類濃度とステロイドホルモンに関しては本年3月に金沢大学で開催された第83回日本衛生学会学術集会で2演題を発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
以下の4点を中心に研究計画を作成中である。 第1に、ベトナム側の共同研究者と本研究結果について意見交換し、それを踏まえて調査スタッフや参加者に結果報告会を開く。 第2に、参加者の健康状況、特にPSAが高値であった人の前立腺がん発症の有無を確認する。 第3に、この結果を8月に開催されるDIOXIN国際会議(韓国で開催)で大学院博士後期課程2年の留学生2名が発表する。 第4に、学会で発表した内容の論文を作成し、国際誌に投稿する。
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