2011 Fiscal Year Annual Research Report
チェルノブイリにおける放射線誘発甲状腺がんの発症メカニズム解明にむけた疫学調査
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23406020
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Section | 海外学術 |
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
高村 昇 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (30295068)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林田 直美 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教 (00420638)
松田 尚樹 長崎大学, 先導生命科学研究支援センター, 教授 (00304973)
中島 正洋 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (50284683)
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Keywords | チェルノブイリ / 甲状腺がん / 甲状腺結節 |
Research Abstract |
本研究の目的は、チェルノブイリにおける甲状腺結節群を対象とした症例-対照研究を行い、甲状腺がん発症リスク因子の解明を行うことで、低線量放射線内部被ばくによる甲状腺がん発症のメカニズム解明を目指すものである。 我々は、ウクライナのジトミール州において、原発事故当時に0-10歳であった住民のうち、チェルノブイリ笹川医療協力プロジェクトの甲状腺スクリーニングにおいて甲状腺結節を指摘された住民約160名を結節群とした。対照群として、年齢、性別をマッチングさせた、甲状腺異常を指摘されていない住民約160名を調査した。両群において超音波検査を行い、結節を認めた場合には可能な限り細胞診を行い、診断を確定した。全症例で超音波画像を保存し、細胞診は全てエコーガイド下に行った。その結果、結節群の12例で悪性であることが否定できず、対照群に比較してがん発生の可能性が有意に高くなっていた(p<0.001)。 今回の研究では、結節群の12例(7.5%)で悪性が疑われたにもかかわらず対照群で悪性の可能性がある症例は皆無であった。個人の被ばく線量の評価ができていないため、はっきりと結論付けることはできないが、チェルノブイリ原発事故後に甲状腺良性腫瘍を指摘された小児では新たに甲状腺がんを発症する可能性が否定できず、厳重な経過観察を続けて行く必要性が示唆された。この様な対象者では、甲状腺結節はがんのハイリスク因子である可能性があり、今後さらに詳細な症例の検討が必要である
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
すでに、予定していた症例群と対照群の選定、実際の生化学的評価、さらには超音波検査と結節がみられた症例の細胞診断も終了し、結節群において、その後の甲状腺がんリスクが高いことを証明したため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、結節群と対照群においてのさらに詳細な検討を行う予定である。具体的にはホールボディカウンタで」測定した内部被ばく線量と甲状腺がん発症との関連や、遺伝子を抽出してのがん発症症例と非発症症例における遺伝子プロファイルの差異等について検討する。
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Research Products
(11 results)