2012 Fiscal Year Research-status Report
大容量コンテンツ配信のための自律分散型システムの構築に関する研究
Project/Area Number |
23500088
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
菅原 一孔 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90149948)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川村 尚生 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10263485)
笹間 俊彦 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80362896)
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Keywords | モバイルエージェント / コンテンツ配信システム / 分散管理 / 自律的動作 |
Research Abstract |
本研究計画は,これまで研究を進めてきたモバイルエージェント技術に関する研究成果をもとに,動画像などの大容量のコンテンツを配信するための,高速なエージェントの移動を提供するフレームワークを開発することを目的とする.同時に,一部の計算機に不具合が発生した際にも,自動的,自律的にシステム全体が復旧する仕組みの開発も目指す.自律分散型コンテンツ配信システムでは,サーバ計算機に一極集中していた負荷を分散させることが可能となり,耐障害性や柔軟性に富むシステムを安価に構築することも期待している.我々は従来からモバイルエージェント技術に関する研究を積極的に進めており,その研究成果は学術論文として,あるいは国際会議などの場を通して多数報告してきた.そして,これまでに実施してきた研究により,モバイルエージェント技術を積極的に利用したコンテンツ配信システムの有用性は確認している.すなわち複数の計算機にコンテンツを分散配置することで,一部の計算機に負荷が集中することなくコンテンツ配信を行なうことができること,ならびに一部の計算機に不具合が生じてもシステム全体が停止してしまうことなくコンテンツ配信サービスを提供し続けるシステム構成が実現可能であることなどを確認している.本年度は大容量のコンテンツを配信するシステムを実現するために,当初の研究計画にのっとり,障害発生時にエージェント群が自律的にシステムの復旧に当たる仕組みの開発を主に手掛けた.その結果,元コンテンツを保持するエージェントと同様にそれらのバックアップエージェントをネットワーク上に分散的に配置し,障害が発生した際にはそれらをもとに,システムの復旧を自動的かつ自律的に行う手法を開発することができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績概要でも述べたとおり,昨年度開発した障害発生時にエージェント群が自律的にシステムの復旧に当たる仕組みの開発に引き続き,エージェントの移動を高速に行うための仕組みづくりについて研究を進めた.その結果,キャッシュと呼ぶ仕組みの開発に成功し,同一のデータを繰り返して転送することなく,結果として高速にシステムを稼働する仕組みを開発した.なお,キャッシュという言葉を使って,他のシステムがファイル単位でデータを管理している点,本システムではプログラムを構成する関数の単位で管理するなど,より細かい管理を行うよう工夫した.これにより,より柔軟なデータの管理が可能となり,高速なモバイルエージェントシステムを構成する手法を提案できた. 開発した手法による具体的なシステムの構成例として,分散型のe-ラーニングシステムを構築した.これは,学習のための問題文だけでなくその利用者の学習履歴や,あるいは利用者が入力した回答の正誤を判断する機能を,モバイルエージェントとして実装した.実装されたエージェントは,利用者の要求により端末間を自律的に移動し,利用者に学習のための資源を提供しようとするものである.その中では,文字データだけでなく,静止画や動画,あるいは音声のようなマルチメディアデータを取扱うことができる.この,マルチメディアデータの取扱いを可能とするために,本研究課題による研究成果が利用されている.
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画最終年度にあたる平成25年度には,研究計画に従い“接続されているネットワーク環境に応じて,端末計算機の機能を選定する仕組み”について研究を進め,最終的にシステムの完成を目指す.また,初年度から研究を進めてきた成果による研究内容の仕上げを行うものである. 具体的には,高速化とともに大容量化が進むネットワーク環境であっても,必ずしも同一の環境とはいえない状況下で,いかに個々の計算機がシステム全体の役割を分担するかという点に関する研究といえる.現在考察中の一つの解決策として,その計算機が置かれているネットワーク環境に応じて,コンテンツ配信の機能は実装せず,コンテンツの受信のみ行なう機能を実装した端末の参加を許すなど,多様な環境内においてかつ多様な能力を持つ端末の混在を可能とする方法を検討し,そのシステムの実装を進めることとする.その際,それぞれの計算機の処理能力の把握とともに,ネットワーク環境の能力も重要な要素となると考えている.このネットワーク環境は,常に一定の値を持つわけではなく,その時々のよりネットワークで通信できる速度が変化する.このためには,そのネットワークの通信速度をダミーデータの転送し,これによりその速度を推測するなどの方法を取りたい.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
現在までの達成度の部分で述べたとおり,本研究計画は当初の計画に従い研究を進めることができている.また,それに伴い研究成果を得ている.しかし,研究成果が得られた時期が当初参加を予定していた国際会議への論文投稿時期と合致しなかったことや,計画と参加費や旅費等の差額が発生じたため当該研究費が生じた.本年度の研究は上述の通り,これまで2年間の研究成果をもとにネットワーク環境に応じた端末計算機の機能を選定する仕組みの開発を行い,本研究計画の総まとめを行う.それにより得られた成果は,学術論文や国際会議に参加して積極的に公表してゆくことを考えている.それらの研究を遂行するために,計算機部品をはじめとする消耗品や,学術論文投稿料,国際会議参加費あるいはそのための旅費等に当該研究費を使用することを計画している.
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