2012 Fiscal Year Research-status Report
民俗芸能の舞踊の伝承を支援するための電子博物館の構築に関する研究
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23500108
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
玉本 英夫 秋田大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10108920)
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Keywords | コンテンツ・アーカイブ / バーチャルリアリティ / 電子博物館 / 民俗芸能の舞踊 / 伝承技術 / モーションキャプチャ / Webアプリケーション / 舞台空間の体験 |
Research Abstract |
本研究では、民俗芸能の舞踊の伝承に資するために、電子博物館を構築して、舞踊の人文学的意義、舞踊の芸術性、舞踊の伝承技術を統合して広く社会に公開することを目指す。 電子博物館としては、インターネットを用いるWebベースのものと公共施設などにPCと表示装置を設置する出張式のものを想定している。平成24年度は、出張式の電子博物館を開発した。 民俗芸能の舞踊は、演技だけでなく、舞台、周辺の様子、衣装、楽曲、踊り手のような舞台空間を含む複合的な芸能である。伝承のためには、演技だけに注目するのではなく、舞台空間の中で演じられる舞踊の鑑賞体験、舞台空間の中に入って自ら舞踊を演じる体験ができることが大切である。バーチャルにこのような体験ができるように、まず、舞台、周辺の様子、衣装を身に付けた踊り手のCG、楽曲を組み合わせ、VR技術を使って舞台空間を制作するシステムを開発した。このシステムには、制作した舞台空間を地図上に登録できる機能、舞踊の解説を登録できる機能を用意した。次に、制作された舞台空間で演じられる舞踊をVR空間で鑑賞できるシステム、さらに、Kinectを使って演技を入力し、舞台空間の中でユーザ自らが舞踊を演じられるシステムを開発した。これら3つのシステムは統合されていて、ユーザは、自ら舞台空間を構築もできるし、あらかじめ用意してある舞台空間を地図から選択し、解説を読んで舞踊の人文学的意義、舞踊の芸術性などを学びながら、舞台空間の体験と演技の体験をすることができる。画面は超単焦点液晶ディスプレイを使ってスクリーンや壁に大きく投影することができ、臨場感のある体験をすることができる。 舞踊空間として、秋田の代表的な民俗芸能の舞踊の「秋田おばこ」「毛馬内の盆踊」「西馬音内の盆踊」「角間川の盆踊」を制作した。実際に舞台空間を体験して、舞踊の伝承に資するために効果的であることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、民俗芸能の舞踊伝承のための電子博物館の構築を目指している。電子博物館としては、Webベースものと公共施設などに設置する出張式のものを想定している。 当初、今年度の目標は、前者の電子博物館の開発であった。昨年度開発したWebアプリケーション(データベースから動作データをダウンロードしてCGで舞踊を再現、学習者の体型のCGモデルで舞踊を再現、舞踊の動作を解説するコンテンツの閲覧)に加え、舞踊の人文学的意義、芸術性などを解説するWebアプリケーションを開発し、これらWebアプリケーションを統合した電子博物館のプロトタイプを構築する予定であった。 開発の初期の段階で、民俗芸能の舞踊は,演技だけでなく、舞台、周辺の様子、衣装、楽曲、踊り手のような舞台空間を含む複合的な芸能であり、伝承のためには、演技だけに注目するのではなく、舞台空間の中で演じられる舞踊の鑑賞体験、舞台空間の中で舞踊を演じる演技体験のできる環境の提供が重要であることが分かった。Webベースの電子博物館でこのような体験ができるようにすることは難しく、今年度は、舞台空間をバーチャルに体験できる出張電子博物館を開発することにした。 電子博物館において閲覧者の演技動作を入力することを考えたとき、これまで用いて来た磁気式モーションキャプチャに変わる簡易な装置の開発が必須である。Webカメラ、加速度センサ、Kinectの利用を検討し、Kinectが安価であって取扱いが容易であること、SDKがメーカより公開されていること、活用情報が豊富であることより、出張電子博物館で演技体験をするときの閲覧者の演技動作の入力にKinectを用いた。 想定していた電子博物館の二つのタイプの内、出張博物館を開発でき、また簡易型の動作入力装置としてKinectを活用することができたので、研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
Webベースの電子博物館(以下、Web電子博物館)を構築するための要素技術として、平成23年度に開発したWebアプリケーションに加えて、次のようなWebアプリケーションを開発する。 舞踊の習熟度の評価するための手法を検討し、簡易な動作計測装置(Kinect)を用いて学習者の動作を入力し、学習者が、教師の姿勢との違いを目視で、また、体の部位の姿勢や動作速度の違いを定量的に確認できるWebアプリケーションを開発する。学習者は自分の演技と模範演技(教師の演技)を観察しながら、習熟度の自己評価ができる。 民俗芸能の舞踊が持つ人文学的意義や芸術性を紹介するコンテンツを制作し、このコンテンツを閲覧できるWebアプリケーションを開発する。コンテンツ制作には専門知識が要求されるので、「わらび座」や地域の保存会と共同で作業を行う。 最後に、Web電子博物館のブースの構成や順路などの構造設計を支援するオーサリングツールを開発する。このオーサリングツールを使って、平成23、25年度に開発のWebアプリケーション用いながら、民俗芸能の舞踊の伝承に資するために、舞踊の人文学的意義、芸術性、伝承技術を統合して公開できるWeb電子博物館を構築する。構築したWeb電子博物館は、インターネットを使って広く一般に公開する。 平成24年度に開発した出張電子博物館は、伝承技術の一つとしてWeb電子博物館で公開し、閲覧者との共同作業で舞台空間を制作することによって、出張電子博物館を充実させる仕組みを構築する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
Webアプリケーションを開発しその動作確認を行うために、また、出張電子博物館を実装するためにパソコンを購入する。Web電子博物館を簡易に閲覧するために、PDAを購入する。 調査、成果発表、研究打合せのために、旅費を計上する。ソフト開発、実証実験の補助のために、また、資料収集、専門知識の提供のために謝金を計上する。 研究成果を発表するために投稿料を計上する。民俗芸能の舞踊のモーションキャプチャデータを収録するために、スタジオ使用料を計上する。学会発表のために参加料を計上する。
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Research Products
(6 results)