2012 Fiscal Year Research-status Report
伝統工芸技法の仮想体験に基づくミュージアムのディジタル化技術の開発
Project/Area Number |
23500139
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Research Institution | Aichi Institute of Technology |
Principal Investigator |
水野 慎士 愛知工業大学, 情報科学部, 准教授 (20314099)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横井 茂樹 名古屋大学, 情報科学研究科, 教授 (20115744)
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Keywords | デジタルミュージアム / コンピュータグラフィックス / 対話的システム / NPR / バーチャルリアリティ / メディアアート / 幾何モデリング |
Research Abstract |
本研究では,より進んたデジタルミュージアムの構築を目指して,ミュージアムで活用できる対話的CG作成手法やNPR手法,展示用CG手法を開発する.日本の伝統美術工芸技法も対象として,ミュージアム来館者が楽しんだりミュージアムでの調査研究で活用できる伝統工芸仮想体験システムの開発を行う.またミュージアムの資料や情報を来館者に効果的に提示するシステムの開発を行う. 平成24年度は,まず縄文土器を研究する考古学者などを対象にして,対話的縄文生成シミュレーションシステムを開発した.実際の縄文土器制作に使用される二段縄や棒巻き付け縄の三次元形状を仮想空間で再現して,これらの仮想縄をCG空間の仮想土器上で転がすことで,縄文生成のリアルタイムシミュレーションを行った.これにより,様々な縄の生成と縄文の確認をCG上で素早く正確に行うことが可能となり,縄文土器文様の研究に活用することができるようになった.次に,ミュージアムの写真やビデオの資料を来館者に効果的に提示することを目的として,多数のビデオ素材を同時に再生しながら,ユーザが対話的に映像や音声を強調することができるシステム「GAYAIT」を開発した.このシステムは名古屋市科学館で常設展示されるとともに,科学館50周年イベントの特別展示でも使用された.また対話的NPR手法として日本の伝統工芸手法のガラス切子に着目して,レイトレーシングの高速化に基づく対話的ガラス切子細工体験システムの開発を行った.加えて,運動視差による立体視に対応した対話的三次元CG作成手法も開発した.その他に三次元CG基盤技術として,実際のスケッチブックの絵から三次元CGを作成する手法,実空間やユーザを三次元CG化して対話操作する手法などを開発した. なお,これらの研究成果のいくつかは国内外の会議や学会誌で発表を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は,既存のミュージアムに対してコンピュータ技術を活用したデジタルミュージアムの構築のための技術を開発することである.特に日本の歴史や文化に関する文化財を保有するミュージアムにおいて,CGやVR,マルチメディア技術を活用して,来館者や研究者が使用できるシステムを開発する.また,そのための基盤技術を開発する. 平成23年度は主に来館者に向けた技術やシステム開発を行った.その中では,伝統工芸の一つである沈金に着目して,CG空間で対話的に沈金を体験できる仮想沈金システムの開発や拡張を行った.また,ソーシャルメディアを活用したオンラインミュージアムを開発した.さらに,縄文生成シミュレーションの基盤技術を開発したり,ミュージアムでの展示に活用できる映像提示基盤技術「GAYAIT」を開発した. そして,平成24年度は来館者に加えて,ミュージアム内の研究者に向けた技術やシステム開発を進めた.その中で開発した縄文生成シミュレーションシステムは,縄文土器制作で実際によく使われる二段縄や棒巻き付け縄の三次元形状を仮想空間で再現して,リアルタイムで土器表面で縄を転がすシミュレーションを行い,縄文を三次元CGで正確に生成することを可能とした.これは考古学者による様々な縄による縄文文様の研究を支援することができる.また映像提示技術「GAYAIT」を名古屋市科学館のビデオ資料を提示する常設展示物の中で使用したり,50周年記念イベントで活用することができた.これらの成果は国内の学会誌や国内外の会議で発表を行った.加えて,伝統工芸ガラス細工である切子を仮想空間で体験する手法の開発を進めるとともに,三次元CGを対話的かつ直感的に生成するための基盤技術の開発を行って国内外の会議で発表を行った. 以上のことにより,おおむね順調に研究が進展していると判断する.
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は,平成23年度および平成24年度に開発した技術やシステムをさらに高精度化,高機能化することで,ミュージアム来館者や研究者のための実用的システムの開発をさらに進展させる.また,新たな伝統工芸や考古学研究に着目して,それらの仮想体験を実現するための技術やシステムの開発を行う. まず,縄文生成シミュレーションについては,より多彩な縄形状による文様生成に対応させるとともに,縄形状の定義や土器表面上での縄の転がしのためにより直感的で使いやすいユーザインタフェースを開発する.そのために,縄形状表現のための新たなモデルの開発,タッチパネルやKinectによる縄や土器の移動変形操作の実現などを行う.また,仮想ガラス切子システムについて,GPUによる並列処理,計算手法の改善,屈折反射の近似再現手法などを開発することで,リアルタイム対話操作を実現する. 平成24年度に開発したスケッチブックの絵から対話的に三次元CGを生成する手法,実空間やユーザを三次元CG化して対話操作する手法,運動視差立体視に対応した三次元CG対話操作手法については,ミュージアムの展示用システムとして実用化する. 新たな伝統工芸技法として,平成23年度に開発した仮想沈金システムを改良して,仮想蒔絵システムの開発を行う.その実現のために,表面形状の変形と研磨を実現する手法の開発,漆の積層を再現するためのモデルやレンダリング手法の開発を行う.また,縄文土器研究の一環として,縄文土器破片を自動的に組み立てるシステムの開発を行う.そのため,破片形状の三次元形状を取得して,断面同士の三次元的形状一致度を高速に計算する手法の開発を行う. そして,これらの研究の進捗状況は,逐次国内外の会議や論文誌で発表を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は,平成23年度および平成24年度に開発した技術やシステムをさらに高精度化,高機能化することで,ミュージアム来館者や研究者のための実用的システムの開発をさらに進展させる.また,新たな伝統工芸や考古学研究に着目して,それらの仮想体験を実現するための技術やシステムの開発を行う.そのため,CG映像生成やマルチメディア処理を高速に行うことが必要となるため,高性能なCPU,大容量メモリ,3D対応高性能グラフィックスボードを搭載するPCを購入する(約60万円).そしてユーザインタフェース構築のために,マルチタッチ対応タブレットを購入する予定である(約20万円).その他,研究の遂行に必要な物品を購入する(約10万円). また研究成果の発表や関連研究の調査,各地のミュージアムの情報収集のため,SIGGRAPHなどCG関連の国内外の会議に出席したり,現地調査や交流を行う予定である(約50万円).
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Research Products
(14 results)