2011 Fiscal Year Research-status Report
動的環境における大規模な多目的最適化問題を対象とした並列群知能法の高速化
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23500169
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
狩野 均 筑波大学, システム情報系, 准教授 (40251045)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 群知能 |
Research Abstract |
1.多目的最適化の検討 多目的最適化問題をアントコロニー最適化法(ACO)で扱う場合、目的関数の数だけフェロモン行列を用意して、各フェロモン行列に対して目的関数が最適となる解を生成する蟻のみがフェロモンを更新する方法が多数提案されている。今年度は、多目的最適化問題のベンチマークとして広く用いられている2目的巡回セールスマン問題(bTSP)を対象として調査・検討した結果、BicriterionAnt(BANT)と呼ばれるACOが最も優れていることがわかった。一方、bTAPに対しては、遺伝的アルゴリズムの一種である、NSGA-IIが優れているといわれているので、この両者を比較検討した。その結果、以下のことがわかった。(1)広い領域に渡ってパレート最適解を求めるためには、NSGA-IIが適している。(2)狭い領域で妥協解を求めるためには、BAntが適している。(3)ACOでパレートフロントの両端を求めるときには、フェロモン行列の合成方法として、荷重積法、中心付近を求めるときには、荷重和法が優れている。2.動的最適化の検討 ACOを動的最適化問題に適用する場合、ACOとDijkstra法をハイブリッドする方法、ならびに変動の予測値を探索に利用する方法の検討が必要である。今年度は、後者に着目した。また、次年度に実施する予定だったACOの高速化の検討も一部実施した。時間依存TSP(TDTSP)を対象に、予測交通量を考慮したACOを提案した。TDTSP は、都市間の旅行時間が時々刻々と変化するタイプのTSP である。MAX-MIN Ant System(MMAS)をベースとして、質の高い初期解を生成する方法と、フェロモン行列を改良する方法を提案した。都市数318までの問題を用いて実験を行った結果、MMAS と比べて解の精度を落とすことなく探索速度を3倍向上することができることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、環境が激しく変動する中で大規模な多目的最適化問題のパレート最適解を高速に計算できるアルゴリズムを開発することを目的としている。全体の達成度は、約30%であり、概ね順調といえる。研究実施計画(平成23年度)に記載した内容は、ほぼ終了した。また、国内の学会発表1件と国際会議での発表1件を記載した通り達成した。 動的環境と多目的最適化の両方を現実の大規模ネットワーク上で扱うことについては、動的環境の部分は40%達成した。基本アルゴリズムの検討は、ほぼ終了し、今後は、厳密解法とのハイブリッド化の検討を実施する予定である。また、多目的最適化の部分は、20%達成した。本手法を遺伝的アルゴリズムと比較検討した結果、遺伝的アルゴリズムの性能が、本課題の申請前に調査した文献上の性能を大きく上回ることがわかった。アントコロニー最適化法は、比較的狭い領域のパレート最適解を発見することに関しては、遺伝的アルゴリズムを上回るものの、パレートフロント全体に分布する解を発見することについては、劣っていることがわかった。 本研究では、フェロモン行列と部分解集合を融合すること、ならびに収束後のフェロモン行列を再利用することにより、再探索に要する時間を大幅に短縮することを狙っている。今年度の達成度は、40%である。前者については、来年度以降に検討する。後者については、目的関数値の予測値を利用する方法を開発し、再探索に要する時間を1/3に短縮した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度は、交付申請書に記載した通りに進んだので、平成24年度も予定通りに実施する。(1)部分解の利用方法の検討、(2)Dijkstra法とのハイブリッド化の検討、(3)実世界を対象としたシミュレータの開発の3点が、平成24年度の目標である。また、これに加えて、群知能のもう一つの代表である「粒子群最適化法」もバックアップとして検討する。研究の手順としては、まず、シミュレータを開発し、次にハイブリッド化を検討し、最後に部分解の利用を検討する。粒子群最適化法は、これらと平行して実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究を実施するために使用する研究設備については、現在の研究環境でこと足りる。特別な設備を追加する必要はない。研究費の主な支途は、プログラム作成補助として大学院生を短期雇用するための費用、ならびに研究討論・文献調査・研究発表のための国内外への出張旅費である。 なお、平成23年度の予算残額が約3万円あるが、これは、研究発表を実施した国際会議が年度をまたいでいたためであり、研究費の実質的な繰り越しはない。
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