2011 Fiscal Year Research-status Report
脳科学と情報科学を融合させたBMI構築のための多チャネル脳波信号処理技術の革新
Project/Area Number |
23500202
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
牧野 昭二 筑波大学, システム情報系, 教授 (60396190)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
RUTKOWSKI Tomasz 筑波大学, システム情報系, 講師 (50415238)
宮部 滋樹 筑波大学, システム情報系, 助教 (50598745)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 知能ロボティックス |
Research Abstract |
本プロジェクトでは、人が音の空間性を認識するときの脳活動に着目し、基礎研究を行なうとともに、このような空間性を有する音の聴取時に観察される特徴ある脳活動を利用したブレインマシンインタフェースの開発を行なった。まず、聴覚上の空間応答特性と時間応答特性を解明するため、健常者を対象にした非侵襲的な脳波測定を行なった。8つのスピーカを用いて空間的に音を提示した場合の脳計測実験を行ない、新たな信号処理手法の開発を並行して行なった。予測した方向から音がすると、P300という期待に関する反応が起こるので、信号処理によってこれを抽出する。抽出された信号は、ブレインマシンインタフェースに応用し、車いすなどを動かすために利用出来る。被験者6人、刺激音2種類について、脳波を用いて空間刺激に対するP300応答を識別する場合の、時間・空間の脳波活動領域の測定を行なった。これによって、ブレインマシンインタフェース応用に向けた脳波チャンネル選択を可能とした。音源の方向に関する誘発電位を測定し、ターゲットと非ターゲットに対する誘発電位の差をプロットすると300ms付近での反応が一番大きなコントラストを示すことを明らかにした。また、刺激提示後335msでのターゲットと非ターゲットへの反応の違いから、脳の構造モデルによってこの時刻での脳活動の位置が推定できることを明らかにした。正面から音を提示した場合と背面から音を提示した場合の事象誘発電位 P300の応答実験結果から、音源位置を変化させた場合、P300(刺激の300ms後に現れる正の誘発電位)に変化が確認できた。これより、提案法の実現可能性を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は、聴覚上の空間応答特性と時間応答特性を解明するため、健常者を対象にした非侵襲的な脳波測定を行なった。脳計測実験を行ない、新たな信号処理手法の開発を並行して行なった。これまでに得られた、被験者の脳波から推定された事象誘発電位(P300)の時系列平均に関する結果から、音源位置を変化させた場合、P300(刺激の300ms後に現れる正の誘発電位)に変化が現れることを明らかにした。P300は別名「アハ反応」ともよばれ、注意反応の指標であり、被験者が期待した通りの刺激が起こったときに観測される。P300は他の誘発電位に比べて抽出が容易であり個人差も少ないため、これまでのブレインマシンインタフェースに広く利用されて来た。本研究では、この反応を利用した新しい聴覚ブレインマシンインタフェースシステムを検討している。つまり、音源移動に関連した脳反応を利用した新しい聴覚的ブレインマシンインタフェースの枠組みである。これまでのブレインマシンインタフェースでは、主に画像による刺激を用い、「アハ反応」と言われるP300の有無を抽出し、それをインタフェースのon/offスイッチとして用いていた。一方、この新しい聴覚的ブレインマシンインタフェースでは、音源移動を刺激として、同様にP300の有無を抽出することで、インタフェースを制御する。これを利用した聴覚的ブレインマシンインタフェースの仕組みとしては、例えば、ヘッドフォンを装着し、HRTFと呼ばれる音源定位法によって様々な音源の方向をランダムな順番で提示する。ユーザは、自分の行きたい方向に注意を向けていて、その方向から音がするとP300が生じる。この反応を抽出して、車いすをユーザが望んだ方向へ誘導することが可能になる。
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Strategy for Future Research Activity |
ブレインマシンインタフェース(BMI)は、脳からの信号を用いて機械やコンピュータを制御する新しいパラダイムとして近年脚光を浴びており、脳波を用いて車イスを制御するシステムも報告されている。ブレインマシンインタフェース技術は、将来、脊髄などに損傷を負い手や足が不自由になった人々の回復支援やリハビリテーション手段としても注目され、人々のクオリティーオブライフ(QoL)向上への貢献が期待されている。平成23年度に引き続き、フェーズIIIとして、脳波EEG信号の測定実験とアルゴリズム改良を行ない、脳波EEG 信号のノイズ低減、目的信号推定精度向上、ブレインマシンインタフェース動作安定化を実現させる。さらに、手や足の動きと脳波の部位・特徴との関係を解明する。これらの知見を活用し、筑波大学の関連プロジェクトと連携を図りながら、脳波により手や足を動かすブレインマシンインタフェースを構築し、脊髄などに損傷を負い手や足が不自由になった人々の回復支援やリハビリテーションへの応用を図り、人々のクオリティーオブライフ(QoL)向上に貢献する。また得られた結果を取りまとめ、成果の発表を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度の経費は、旅費の使用が予定より少なく済んだため、約390、000円の繰越金が発生した。この繰越金は、平成24年度の旅費として使用する。本研究の遂行に必要なマルチチャネル脳波EEG測定装置は、理化学研究所のものを使用する。実験環境の整備と実験準備、データ収集、データ整理に補助者を要する。本研究による成果を国内外に積極的に周知するために、調査・発表のための旅費および会議参加費を要する。平成24年度の経費は、筑波大学、理化学研究所、東京大学には既存の設備が十分にあるため、老朽化既存設備の更改および新しい研究協力者用の新規設備のための経費のみが必要となる。また、実験結果の資料整理や研究資料の作成補助等に補助者を要する。成果発表のための経費は、国内学会(1回)、国際会議(1回)を計画している。
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Research Products
(2 results)