2012 Fiscal Year Research-status Report
脳科学と情報科学を融合させたBMI構築のための多チャネル脳波信号処理技術の革新
Project/Area Number |
23500202
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
牧野 昭二 筑波大学, システム情報系, 教授 (60396190)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
RUTKOWSKI Tomasz 筑波大学, システム情報系, 講師 (50415238)
宮部 滋樹 筑波大学, システム情報系, 助教 (50598745)
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Keywords | 知能ロボティックス |
Research Abstract |
本プロジェクトでは、人が音の空間性を認識するときの脳活動に着目し、基礎研究を行なうとともに、このような空間性を有する音の聴取時に観察される特徴ある脳活動を利用したブレインマシンインタフェースの開発を行なった。平成24年度は、音響刺激の選別やmEMD法フィルタリング開発用のデータを得るため多くの被験者実験を行なった。 (1)N200とP300を用いた空間聴覚BMIに関する研究[3]では、空間的に配置され、多方向から提示される聴覚刺激と音源方向を対応付け、target刺激の音源方向、すなわちtarget方向に意識を向ける空間聴覚BMIを検討した。その結果、従来用いられてきたP300反応に加えてN200反応の特徴を識別に用いる事で識別正解率が改善された。また、N2ac反応が見られる時間区間のみを切り出して識別することで、波形全体を用いて識別するよりも高い精度でtarget刺激の音源方向を推定できた。 (2)空間的な視覚、視聴覚、聴覚によるBMI スペリングの心理物理的反応および EEG 反応の比較に関する研究[1]では、視覚と聴覚によって誘発される感覚モダリティの違いに注目した心理物理実験を行なった。その結果、聴覚モダリティは従来の視覚及び視聴覚モダリティと同じように認知されることが分かった。さらに、脳波実験を行なった結果、P300の反応において、聴覚モダリティが視覚及び視聴覚モダリティと同等の信頼性を持ち速い脳反応を誘発させるという非常に興味深い可能性を得ることに成功した。 (3)聴覚BMIにおける空間音響刺激の最適化に関する研究[4]では、空間聴覚BMIのプロトタイプとして、仮想音源の概念を採用することにより、実際のスピーカ数よりも多くの選択肢を持つコマンド選択が可能な音響システム構成を検討した。その結果、人間の脳が仮想音源を実音源と同等のものとして知覚している可能性が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)mEMD 法フィルタリング開発によってデータ使用率 80~90%を達成 脳波データごとの個体差はあるものの、mEMD法フィルタリング開発によってデータ使用率80%の達成に成功した。また、フィルタリングされた脳波データを図示することでP300反応を確認することができた。しかし、今回開発した手法は処理速度の面で課題が残っており、現段階ではリアルタイム聴覚BMIへの実装は難しい。次の段階である特徴量抽出やクラシフィケーションの確立と並行して解決するべき新たな課題を残した。 (2)BMI利用に適した音響刺激を 8~16 種類選別 今回の研究では5つの空間聴覚BMIについて検討し、それぞれのアプローチからBMIに適した音響刺激の選別を行なった。比較的短い期間で網羅的に調査を行なうことに成功したが、心理実験の正答率に注目したところ、実・仮想音源間における有意差しか得ることができず、音響刺激を8~16種類に選別することができなかった。今後は、心理実験の正答率だけでなく、各音響刺激が持つ他の特徴量や脳波実験における有意差に注目した選別が求められる。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)信号処理手法の開発 オッドボール課題実施時の脳波を測定し、それによって得られる16~32チャネルのEEG信号データを題材に、EEGビームフォーミングによる目的信号の強調を行なう。その手法として、mEMD法、CCA法、SSA法の3手法から最適なものを選定し、これに昨年度提案したN200とP300を併用するパターン抽出手法を組み合わせて新たなBMIの構築を試みる。これにより、測定時に重畳するノイズの影響を低減させることで、次年度のオフラインシステムおよびリアルタイムシステム構築における脳波パターンの抽出を正確かつ容易にする。 (2)音響刺激の選択 まずは20名程度の被験者を対象に、30~50種類の音響刺激への反応を心理物理実験によって調査する。マルチチャネル空間音響を利用して、健常者に実音源(スピーカ)や、VBAP、HRTFなどで生成される仮想音源をそれぞれ複数用意する。この環境下で、それぞれの音源から刺激音を個別に提示し、ターゲット音源に対してのみボタンプレスで応答するオッドボール課題を行なう。この実験によって、ボタンプレスの正答率や、刺激からボタンを押すまでの反応速度から音源定位の難易度を評価し、8~16種類の音響刺激を選定する。これらの刺激を用いてBMIを用いた脳波実験を行ない、今年度中に85~95%の正答率を示す音響刺激の発見を目指す。 (3)スペラーインタフェースの改善 昨年度の実験結果から、改善の見込みを加味すると5コマンド程度であれば十分な識別精度に到達すると見込んでいる。そこで、まず少数コマンドの選択を複数の段階に分けて行なうことで多コマンドに対応したスペラーを実装する。その後、目隠しをした被験者に対して、コマンド識別の性能と使いやすさを評価する実験を行なう。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の経費は,物品費の使用が予定より少なく済んだため,343,846円の繰越金が発生した.この繰越金は,平成25年度の旅費として使用する. 本研究の遂行に必要なマルチチャネル脳波EEG測定装置は,理化学研究所のものを使用する.実験環境の整備と実験準備,データ収集,データ整理に補助者を要する.本研究による成果を国内外に積極的に周知するために,調査・発表のための旅費および会議参加費を要する. 。
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Research Products
(5 results)