2011 Fiscal Year Research-status Report
対応する色再現のための光源色推定と画像への順応度評価の研究
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23500223
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
田島 譲二 名古屋市立大学, システム自然科学研究科, 教授 (50381900)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 画像情報処理 / カラー画像処理 |
Research Abstract |
本研究は、二色性反射モデルを利用してカラー画像から光源色を推定することを目指している。これまでの研究では、昼光下で撮影された画像では光源色はほぼ正確に推定できるが、電灯光下で撮影された画像では精度が低下していた。しかし、本来、二色性反射モデルが成り立つ一色の物体では、その色は色度図上で一直線上に並び、異なる色の複数の物体から得られる直線は一点で交わるはずである。しかし、実際の画像を用いたものでは、昼光下の画像によるものでも、光源色度は最小二乗法を用いることによってほぼ正確に求まっているものの、交点は一点ではなくばらついている。 今年度、一眼レフレベルのデジタルカメラを用いた実験を行なったが、その状況は改善はされるものの、大きな変化はなかった。その原因としては、(1)二色性反射モデルが必ずしも正確に成り立っていない、(2)カメラの撮像特性が十分でない、の二通りが考えられた。 そこで、典型的な二色性反射モデルの成り立つ物体として、色の異なる数種類のプラスティック製品を用意し、反射色を分光放射輝度計を用いて計測した。その結果、これらの製品では、二色性反射モデルは十分正確に成り立っていることが分かった。よって、精度低下の原因は、デジタルカメラの入力特性の誤差によることが明らかになった。 対応する色再現のための不完全順応係数に関する研究では、二つの色温度の画像に対して別々に順応した視覚がその二つの間のどの色温度に不完全順応するかについて調べているが、これまでの実験で、余り一貫した結果が得られていない。これについては、提示する画像の輝度、周囲の照度、画像の種類等様々なパラメータが存在し、実験を難しくしている。今年度は、広い画面、広い色域での実験をスムーズに行なうため、フルHDサイズの広色域モニタと高性能なPCを購入し、実験環境の整備を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
光源色の推定に関しては、推定精度の低下の原因を調べることが第1の目標であったが、これはデジタルカメラの入力特性によることが明らかになった。そこで、本来の目的を達成するためには、カメラの入力特性の補正方法を研究対象に加える必要がある、という知見が得られた。1枚の撮影画像から補正データを推定し、画像データを補正すると共に光源色も推定することを新たな研究目標に据えることができたことが大きな進捗であると考える。 不完全順応係数については、本年度は実験環境の整備が目標であり、これを達成した。計画通りに進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
「カラー画像を、簡易な色彩測定器として利用したい」という要求は、コンピュータビジョンの応用分野では、かなり広範に存在する。そのためには、標準ターゲットを用意し、これを撮影することによって画素値を較正するというようなことが従来行なわれている。しかし、このデータを利用するためには、絞り、シャッタースピードなどのパラメータを一定としたままで、実際の撮影も行わなければならず、制約が大きい。撮影画像からカメラの特性の補正と光源推定が同時にできれば応用範囲が広い技術が確立できるので、まずこの研究を重点的に行なう。 不完全順応係数については、典型的な条件での分かり易い結果が求められており、目標の設定が重要である。なかなか難しい問題であるが、明確な枠組みを構築し、小規模な主観評価実験を行なう予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究用の備品に関しては、今年度、モニタ、PCを整備した。来年度は、主に消耗品、ソフトウェアに10万円程度を予定する。 カメラの補正データの推定は、ある種の最適化の問題に帰着できる可能性がある。このような最適化の分野は、近年進歩が急であるので、最新の成果を利用したい。よって、カラー画像、色彩科学関連分野の研究集会に加え、画像を利用した最適化に関連する研究集会にも参加し情報収集を行なう計画である。そのような旅費、参加費に30万円程度を予定する。 不完全順応等の小規模(10名程度)主観評価実験を行なうため、謝金として10万円程度を予定する。
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