2012 Fiscal Year Research-status Report
異種感覚情報の統合による手の自己所有感覚生成機構の解明とモデル化
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23500251
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
松宮 一道 東北大学, 電気通信研究所, 助教 (90395103)
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Keywords | 認知科学 / バーチャルリアリティ / マルチモーダルインターフェース / 実験系心理学 / 行動学 |
Research Abstract |
これまでの研究の多くは,手の自己所有感覚を誘発する際に静止した手を用いており,アクティブな手の動きと自己所有感覚の関係についてはよくわかっていない.そこで本実験では,アクティブな手の動きが手の自己所有感覚を誘発するかどうかを調べた.被験者には自分の手は見えないようにし,ディスプレイに仮想的な手を被験者の手から7.5 cm左に離れた位置に呈示し,その仮想的な手が被験者の手の動きと同期して動いた.被験者は60秒間自分の手を動かした後,自分の手の位置を定位し,仮想的な手の主観的印象を評価した.その結果,アクティブに手を動かし,仮想的な手が被験者の手の方位と一致するときに,仮想的な手の自己所有感覚が強く誘発された.これより,アクティブな動きによって自己所有感覚が誘発されることが示唆される. 次に,手の自己所有感覚が物体の動きの知覚にどのような影響を与えるかを調べた.手の自己所有感覚は自己身体の知覚にだけ関与し,物体の知覚には関与しないと一般的に考えられている.しかし,本研究は,手の自己所有感覚が手の近くに呈示された物体の動きから生成される運動残効を変調することを報告する.この運動残効は,順応刺激とテスト刺激の位置が網膜上で一致していなくても,これらの刺激が自己所有感覚を感じている手に対して同じ位置に呈示されていれば生じた.そして,この運動残効は自己所有感覚が生起しないときには消失した.この結果は,手の自己所有感覚が手中心座標系の空間知覚表象を立ち上げていることを示しており,身体性自己意識の機能的役割を示唆している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の計画では,手の自己所有感覚の機能的特性を明らかにすることであった.現有の実験装置に改変を加えることで実験が可能であったこと,また今までの予備的な実験に加えて,新たに実験データを蓄積する環境が昨年度に完成していたため,本年度は計画通りに実験を進めることができたと考える.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,視覚情報と自己受容感覚情報がどのように統合されて手の自己所有感覚が生起するのかを調べる予定である.昨年度,新規に導入したヘッドマウントディスプレイを使って,没入感のすぐれた視環境の中で,CGで描画されたリアルな手を3次元映像として呈示することが可能となったため,現在はこの新しい実験環境を使った実験計画を練っているところである,
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は,安定した実験データを取得するために,できるだけ多くの被験者に実験をやってもらうことを計画しており,それに伴い,被験者への謝金を支払う計画である.また,次年度は最終年度ということもあり,研究成果を論文としてまとめることを考えており,英文校正および投稿料に研究費を使用する計画である.
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Research Products
(5 results)