2013 Fiscal Year Annual Research Report
異種感覚情報の統合による手の自己所有感覚生成機構の解明とモデル化
Project/Area Number |
23500251
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
松宮 一道 東北大学, 電気通信研究所, 助教 (90395103)
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Keywords | 認知科学 / バーチャルリアリティ / マルチモーダルインターフェース / 実験系心理学 / 行動学 |
Research Abstract |
昨年度の研究により,手の自己所有感覚が物体操作時の手の周囲の空間知覚において重要な役割を担っていることが明らかになったが,手の自己所有感覚を生起する視覚―体性感覚の統合過程がどのようなモデルで説明できるのかは明確ではなかった.手の自己所有感覚の生成機構に関する過去の研究は,視覚情報と体性感覚情報の統合により生成されることを示しているが,この統合過程は視覚が体性感覚を捕捉するモデルを仮定している.しかし,この仮定は実験的に検証されていない.近年の研究より,多感覚情報は,脳内でベイズモデルに従った統計的な方法で統合されていることが指摘されており,自己所有感覚における視覚-体性感覚統合も,体性感覚の視覚補足ではなく,ベイズモデルによる統計的な方法で統合されているのかもしれない.そこで,平成25年度は,手の自己所有感覚を人工的に生成する錯覚(ラバーハンド錯覚)を利用して,手の自己所有感覚を生成する際に視覚と体性感覚がどのように統合されるのかを調べた.その結果,コンピュータグラフィックスで描画された手(CGハンド)が視覚的に明瞭に見える場合は,手の自己所有感覚の生成の際に視覚が体性感覚を強く捕捉し,視覚が優位になった.しかし,CGハンドの視覚的な見えを劣化させると,視覚による体性感覚の捕捉は劇的に弱まり,体性感覚が優位になった.また,CGハンドの見えを中程度にすると,視覚も体性感覚も優位になることはなく,両感覚が同程度に寄与した.そして本研究は,これらの結果をベイズモデルでうまく説明できることを見出した.これは,脳が,手の自己所有感覚生成のために視覚情報と体性感覚情報を統計的に最適な方法で統合していることを示唆している.
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Research Products
(8 results)